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<第二部:桃太郎の鬼退治 歴史編>
(その1 検証者達のティーパーティー)
「散らかっていますが・・・」
そう言いながら鞠絵は自室のドアを開けた。
「ぜ〜んぜん。アニキの部屋よりはず〜っとキレイだよね」
「にいさまのお部屋は本だらけですの。足の踏み場もないですのよ」
と,鈴凛と白雪による容赦ない言葉が航に浴びせられる。
「せめて研究熱心といってくれ」
航がささやかに抵抗するが,妹達は聞いていなかった。
「アニキ,『お掃除マシーン・ポイポイくん1号』を貸そうか?」
「その気持ちだけもらっておくよ。なんか片っ端から捨てられそうだ」
「あ,バレた?ゴミの分別には便利だよ」
「全部必要な本だから,捨てられたら困る!」
「でもあれだけ本があると,そのうちにいさまのお家の床が抜けるですの」
「分かってるんだけどね・・・」
そのやり取りを聞きながら,鞠絵は部屋の中央にある応接セットに3人を招いた。
「・・・どうぞこちらへ」
鞠絵の肩が小さく震えている。
顔をそむけているところを見ると,声に出して笑いそうになるのを我慢しているのだろう。
「あのさあ,鞠絵ちゃん」
鈴凛がニヤニヤしながら声をかける。
「・・・はい,なんですか?」
「我慢しない方がいいと思うよ。笑いたい時に笑っちゃえば?」
「いえ,でも兄上様に失礼ですし・・・」
「我慢されている方が失礼だってばさ。ね,アニキ」
「そうですの。我慢は健康に悪いですのよ」
「お前達はもうちょっと遠慮というものを覚えてくれ」
「へ〜い」
「は〜いですの」
「まったく心がこもっていない返事をありがとう」
航が憮然とした口調で言った。
耐えきれず鞠絵がクスクスと笑い出す。
「あのね・・・」
「あ・・・ごめんなさい,兄上様」
そう言いながらも鞠絵の目は笑っていた。
「いや・・・別にいいけどね・・・ところで鞠絵,紅茶をお願いできるかな?しゃべりすぎてのどが渇いたよ」
「先程は航先生の授業でしたからね。何がいいですか?」
「そんな立派なもんじゃないけど・・・アッサムがいいなあ」
「わかりました。じゃあミルクティーにしますね」
「よろしく」
「あ,姫も手伝うですの」
「私も何か手伝えることない?」
「じゃあ,スコーンを出してもらえますか?」
「了解!」
「えーと,俺は・・・」
「兄上様はお座りになってお待ちくださいね」
「そうですの。にいさまは座っててくださいですの」
「つまりジャマってことかな・・・」
「はいはい。アニキはここに座る」
鈴凛が航の背をぐいぐいと押して,ソファーに座らせた。
鞠絵と白雪が,ポットから紅茶を注ぐ。
鈴凛がスコーンをバスケットに盛りつける。
「アニキ,準備できたよ〜」
「じゃあ,いただこうかな」
「はーい」
妹達の声が重なる。
白雪が一口スコーンをほおばり,驚きの声を上げた。
「このスコーンおいしいですの!」
「白雪ちゃんにそういってもらえるとうれしいです」
鞠絵がうれしそうに微笑む。
「鞠絵ちゃんが作ったんですの?」
「はい。お料理教室で・・・」
「むむむ,姫も油断できないですの。もっとがんばらなくちゃ,ですの」
白雪が考え込む。それを見て鈴凛が言った。
「うーん,料理か・・・私も『お料理マシーン・スーパーシェフくん1号』を改良しようかなあ」
「サンドイッチ以外の料理ができるようにな」
航にそう指摘され,
「うう,それを言われると・・・レシピはネットからいくらでもダウンロードできるのにさ,いざ料理を始めるとうまくいかないんだよね〜。なんでだろ?」
と,頭を抱える。
「同じ食材を使っていても,季節とかで微妙に火加減を変えるって話は聞くしな。調理方法なら,白雪にも見てもらったらどうだ?」
「あ,そっか。白雪ちゃん,協力してくれる?」
「いいですのよ。今度鈴凛ちゃんのお家に行くですの」
「やった!よろしくね」
「こちらこそですの」
「お料理マシーンで作った料理,私にも味見をさせてくださいね」
「うん,もちろん」
紅茶の香りが漂う中,妹達の会話が弾む。
小一時間ほどしてから,航が言った。
「さて,休憩はそろそろ終わりにしようか。続きを始めるぞ」
「え〜,もうちょっといいでしょ〜」
「ダメ。休憩を取りすぎると,かえって頭が働かなくなる」
「姫,もう頭の中がいっぱいいっぱいですの」
「右に同じ〜」
「・・・ここに来た当初の目的を思い出すように」
航の言葉に,鈴凛と白雪は不承不承といった様子でうなずく。
「は〜い」
「はいですの・・・」
それを見て,鞠絵が航に尋ねた。
「兄上様,このお勉強会は夕食までですか?」
「ん,とりあえずそのつもりだよ。あんまり長くやっても能率は上がらないし」
「・・・だそうですよ,鈴凛ちゃん,白雪ちゃん。もう少しだからがんばりましょうね」
「晩ご飯までだったら,もうすぐだね。さっすが鞠絵ちゃん!」
「そうですの!にいさま,早くしちゃうですの!」
先程までと正反対の態度に,航が苦笑する。
「お前達なあ・・・まあいいか。鞠絵,ありがとう」
鞠絵が微笑む。
「いいえ,どういたしまして。兄上様」
※※※
「明日」と言いながら,いったい何日が経過したのか・・・orz
・・・ともあれ,その9です。続くなあ〜(自分で言ってどうする)
<遅くなりましたが,コメントレスです>
>ゆたんぽさん
え〜と,ひょっとしてゆたんぽさんも春歌祭りに参加されてましたか!?
私の恥ずかしいコメント群をご覧になったわけですね・・・(//ω//)キャッッ
それはさておき,四葉ちゃんにも熱狂的な兄チャマが多いので,次回の祭りも楽しみだったりします。
・・・ちなみに,私はうpする画像のセレクトが終了しました。ふっふっふっ
あと,ご依頼の件了解しました。今後ともよろしくです。チェキ!
>私だ!さん
ギャルゲ板には私もよくお邪魔してますが,まったりとした雰囲気で流れてますよね〜
きっと大人の兄(呼び方×12)が多いのでしょう。
VIP板の兄(呼び方×12・・・ってクドい!)を生温かく見守ってもらいたいものです。
ちなみに私の心の中では,鞠絵に関してはいつもこんな(↓)テンションです。
〃⌒⌒ヽ.
i ノリノ )))〉
! (||○_○リ
(v)つ⊂ハ
〈/,'^!ヽ
/ ̄ー'ー' ̄\
/,/-_-_-_-_-_ \ わっしょい!
( ( /,, /― ((神輿))―\ わっしょい!! //
(。'。、。@,。,。,。,。,。,。,。,。,。,。,。@ ) )
∩ヽヽ∩ヽXXXXXXXX/ .∩
i||i ∩i||i:||::::¥_][_¥::::||. i||i
†人=†††¶┌┐¶††††
/■\/■/■\[/■ /■\/■\] /■\■\/■\
( ´∀(´∀(□二二( ´∀( ´∀( ´∀`).□´∀` )Д´)□∀`)
( |つ⊂|_ | | ノつつ|祭)~| |祭) ̄||祭) ̄|つ ⊂|_((|祭)~ノ | ) )つ
〓_| |__〓」 〓_|=|_ 〓__ノ 〓二ノ〓二ノ) ( / (L〓|〓二|〓=〓ヽ
し'し' (_(_ し(_) (_)_)し(_)し(_)(_(_,(_)(_)し' (_)
鞠絵がものすご〜く迷惑そうですけど(笑)
(その1 検証者達のティーパーティー)
「散らかっていますが・・・」
そう言いながら鞠絵は自室のドアを開けた。
「ぜ〜んぜん。アニキの部屋よりはず〜っとキレイだよね」
「にいさまのお部屋は本だらけですの。足の踏み場もないですのよ」
と,鈴凛と白雪による容赦ない言葉が航に浴びせられる。
「せめて研究熱心といってくれ」
航がささやかに抵抗するが,妹達は聞いていなかった。
「アニキ,『お掃除マシーン・ポイポイくん1号』を貸そうか?」
「その気持ちだけもらっておくよ。なんか片っ端から捨てられそうだ」
「あ,バレた?ゴミの分別には便利だよ」
「全部必要な本だから,捨てられたら困る!」
「でもあれだけ本があると,そのうちにいさまのお家の床が抜けるですの」
「分かってるんだけどね・・・」
そのやり取りを聞きながら,鞠絵は部屋の中央にある応接セットに3人を招いた。
「・・・どうぞこちらへ」
鞠絵の肩が小さく震えている。
顔をそむけているところを見ると,声に出して笑いそうになるのを我慢しているのだろう。
「あのさあ,鞠絵ちゃん」
鈴凛がニヤニヤしながら声をかける。
「・・・はい,なんですか?」
「我慢しない方がいいと思うよ。笑いたい時に笑っちゃえば?」
「いえ,でも兄上様に失礼ですし・・・」
「我慢されている方が失礼だってばさ。ね,アニキ」
「そうですの。我慢は健康に悪いですのよ」
「お前達はもうちょっと遠慮というものを覚えてくれ」
「へ〜い」
「は〜いですの」
「まったく心がこもっていない返事をありがとう」
航が憮然とした口調で言った。
耐えきれず鞠絵がクスクスと笑い出す。
「あのね・・・」
「あ・・・ごめんなさい,兄上様」
そう言いながらも鞠絵の目は笑っていた。
「いや・・・別にいいけどね・・・ところで鞠絵,紅茶をお願いできるかな?しゃべりすぎてのどが渇いたよ」
「先程は航先生の授業でしたからね。何がいいですか?」
「そんな立派なもんじゃないけど・・・アッサムがいいなあ」
「わかりました。じゃあミルクティーにしますね」
「よろしく」
「あ,姫も手伝うですの」
「私も何か手伝えることない?」
「じゃあ,スコーンを出してもらえますか?」
「了解!」
「えーと,俺は・・・」
「兄上様はお座りになってお待ちくださいね」
「そうですの。にいさまは座っててくださいですの」
「つまりジャマってことかな・・・」
「はいはい。アニキはここに座る」
鈴凛が航の背をぐいぐいと押して,ソファーに座らせた。
鞠絵と白雪が,ポットから紅茶を注ぐ。
鈴凛がスコーンをバスケットに盛りつける。
「アニキ,準備できたよ〜」
「じゃあ,いただこうかな」
「はーい」
妹達の声が重なる。
白雪が一口スコーンをほおばり,驚きの声を上げた。
「このスコーンおいしいですの!」
「白雪ちゃんにそういってもらえるとうれしいです」
鞠絵がうれしそうに微笑む。
「鞠絵ちゃんが作ったんですの?」
「はい。お料理教室で・・・」
「むむむ,姫も油断できないですの。もっとがんばらなくちゃ,ですの」
白雪が考え込む。それを見て鈴凛が言った。
「うーん,料理か・・・私も『お料理マシーン・スーパーシェフくん1号』を改良しようかなあ」
「サンドイッチ以外の料理ができるようにな」
航にそう指摘され,
「うう,それを言われると・・・レシピはネットからいくらでもダウンロードできるのにさ,いざ料理を始めるとうまくいかないんだよね〜。なんでだろ?」
と,頭を抱える。
「同じ食材を使っていても,季節とかで微妙に火加減を変えるって話は聞くしな。調理方法なら,白雪にも見てもらったらどうだ?」
「あ,そっか。白雪ちゃん,協力してくれる?」
「いいですのよ。今度鈴凛ちゃんのお家に行くですの」
「やった!よろしくね」
「こちらこそですの」
「お料理マシーンで作った料理,私にも味見をさせてくださいね」
「うん,もちろん」
紅茶の香りが漂う中,妹達の会話が弾む。
小一時間ほどしてから,航が言った。
「さて,休憩はそろそろ終わりにしようか。続きを始めるぞ」
「え〜,もうちょっといいでしょ〜」
「ダメ。休憩を取りすぎると,かえって頭が働かなくなる」
「姫,もう頭の中がいっぱいいっぱいですの」
「右に同じ〜」
「・・・ここに来た当初の目的を思い出すように」
航の言葉に,鈴凛と白雪は不承不承といった様子でうなずく。
「は〜い」
「はいですの・・・」
それを見て,鞠絵が航に尋ねた。
「兄上様,このお勉強会は夕食までですか?」
「ん,とりあえずそのつもりだよ。あんまり長くやっても能率は上がらないし」
「・・・だそうですよ,鈴凛ちゃん,白雪ちゃん。もう少しだからがんばりましょうね」
「晩ご飯までだったら,もうすぐだね。さっすが鞠絵ちゃん!」
「そうですの!にいさま,早くしちゃうですの!」
先程までと正反対の態度に,航が苦笑する。
「お前達なあ・・・まあいいか。鞠絵,ありがとう」
鞠絵が微笑む。
「いいえ,どういたしまして。兄上様」
(つづく)
※※※
「明日」と言いながら,いったい何日が経過したのか・・・orz
・・・ともあれ,その9です。続くなあ〜(自分で言ってどうする)
<遅くなりましたが,コメントレスです>
>ゆたんぽさん
え〜と,ひょっとしてゆたんぽさんも春歌祭りに参加されてましたか!?
私の恥ずかしいコメント群をご覧になったわけですね・・・(//ω//)キャッッ
それはさておき,四葉ちゃんにも熱狂的な兄チャマが多いので,次回の祭りも楽しみだったりします。
・・・ちなみに,私はうpする画像のセレクトが終了しました。ふっふっふっ
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>私だ!さん
ギャルゲ板には私もよくお邪魔してますが,まったりとした雰囲気で流れてますよね〜
きっと大人の兄(呼び方×12)が多いのでしょう。
VIP板の兄(呼び方×12・・・ってクドい!)を生温かく見守ってもらいたいものです。
ちなみに私の心の中では,鞠絵に関してはいつもこんな(↓)テンションです。
〃⌒⌒ヽ.
i ノリノ )))〉
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〈/,'^!ヽ
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∩ヽヽ∩ヽXXXXXXXX/ .∩
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( ´∀(´∀(□二二( ´∀( ´∀( ´∀`).□´∀` )Д´)□∀`)
( |つ⊂|_ | | ノつつ|祭)~| |祭) ̄||祭) ̄|つ ⊂|_((|祭)~ノ | ) )つ
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し'し' (_(_ し(_) (_)_)し(_)し(_)(_(_,(_)(_)し' (_)
鞠絵がものすご〜く迷惑そうですけど(笑)
(その6 鬼さんこちら,手の鳴る方へ)
「その答えはこれから分かるよ」
航は言葉を続ける。
「最後は,いよいよ『鬼』についてだね。まず,鬼といったら何を連想する?」
「えーと,上半身裸で頭に角が生えてて虎縞のパンツをはいている・・・かなあ」
「全身が赤か青で,髪の毛がもじゃもじゃで,鉄の棍棒をもってるですの」
「うん。絵本だとそういう鬼が多いね。他には?」
「そうですね・・・」
鞠絵が少し首をかしげる。
「人里近くではなく,山奥の洞窟に住んでいるイメージがありますね」
「なるほど。これで『鬼』のイメージが大体出揃ったかな」
航が妹達を見回した。
「じゃあ,謎解きを始めようか。最初に言っとくけど,生物学的に『鬼』という種は存在しないよ。当然だけどね。『鬼』と呼ばれた人達がいただけだ」
「!」
鈴凛と白雪が驚く。鞠絵は予想していたのか表情を変えなかった。
「アニキ,『鬼』って人間だったの?」
「そうだよ。ある特定の人間の集団のことなんだ」
「集団・・・ですの?」
「上半身裸で,鉄棒を持ってて,山に住む集団・・・鞠絵,どうかな?」
「製鉄民のことですね」
「せいてつみん・・・て何?」
「山で鉄を作って暮らしていた人達のことですよ。農機具や武器も鉄がないとできませんからね。今も昔も,とても大事な産業です。もちろん,その人達は鉄だけを作っていたわけじゃないですけどね」
「山で鉄を?どうやってですの?」
「鉄ってさ,鉄鉱石と石炭で作るんじゃないの?」
その問いには航が答えた。
「今はね。実はそっちの方は,まだまだ歴史的に新しいんだ。日本では昔は・・・といっても,江戸時代や明治時代のことだからそんなに昔じゃないけど,鉄は砂鉄と木炭からつくってたんだ」
「砂鉄って,砂場の中に磁石を入れたら採れるやつだよね。木炭って備長炭とかのこと?」
「そうだよ。しかしよく備長炭なんて知ってるな」
「いや〜,焼鳥屋さんには必ず『備長炭使用』って書いてあるからさ」
「鈴凛ちゃんは焼鳥屋さんに行くんですか?」
鞠絵の問いに,鈴凛はなぜか焦った。
「いやーっ,夕方になると美味しそうな匂いがするからさ〜。つい買っちゃうんだよね〜。あ,でも焼き鳥だけだよ」
「当たり前だろ。一緒にビールなんか買うなよ。未成年なんだから」
「ギクッ」
「鈴凛ちゃん,今のリアクション変ですの」
「あはははははは・・・」
「・・・まあそれについては後でじっくり聞くことにしよう。話を戻すぞ」
航が一つ咳払いをする。
「製鉄民は山の中で鉄を作っていたから,『鉄の棒』と『上半身裸』は納得かな?」
「うん。でも角と虎のパンツと肌の色は?」
「角と虎縞の下着は,陰陽道の『鬼門』に関係するらしいね」
「『鬼門』・・・というと,丑寅の方角で,今だと東北ということでしょうか?」
「・・・分かったですの!『丑』は『牛』で二本の角,『寅』は『虎』で虎縞のパンツですの!」
「でもさ,一本角の鬼もいるよ?」
「うう,そうでしたの・・・」
「いや,いいところまで行ったよ。『鬼』は仏教が伝わってから,『地獄の獄卒』っていうイメージも追加されたからね。そこで一本角や二本角の鬼ができたのかもしれない。なぜか三本角以上の鬼は見ないけどね・・・逆に言うと,そのおかげで『鬼』はより恐ろしい存在になってしまったともいえるけど」
「兄上様,鬼の肌の色はどうなんでしょうか?」
「ああ,それが残っていたね。鉄を作るわけだから,炉の照り返しで日焼けみたいに肌が赤くなったのじゃないかな?」
「アニキ,それだと青鬼の説明がつかないよ?」
「うん,まだ説明が不十分だったね・・・。製鉄民は山で暮らしていたわけだから,当然鉄以外の鉱物も詳しかったんじゃないかな。とすると,鬼の赤の色は『辰砂』すなわち『丹』,青の色は『岩緑青(マラカイトグリーン)』を表していたと考えられるんだ」
「にいさま,その『丹』と『岩緑青』って何に使ってたんですの?」
「『丹』は水銀でね,漢方薬や建物の塗料として使ってたんだ。『丹』を塗ると,赤色というより鮮やかな朱色かな。神社の鳥居の色だよ。『岩緑青』は緑色の塗料だね」
「え,アニキ,水銀って有毒じゃあ・・・」
「その通り。微量でも水銀中毒をおこして,最悪死んでしまう。でも,昔は不老不死になるための薬だとか言われて珍重された」
「うわあ・・・」
「まあ,そういった山の鉱物のスペシャリストでもあったということだね」
「・・・あのさ,アニキ」
「ん,何かな」
「製鉄民の人達ってさ,自分達で鉄を作ったり,鉱物を掘ってたりしてたんだよね?」
「そうだよ」
「じゃあ,なんで『鬼』って呼ばれたり,退治されたりしなくちゃいけないわけ?」
「そうですの。その人達は,何も悪いことをしていないですの!」
「それはね」
航はさらりと言った。
「抵抗したからさ」
「え,何に?」
「大和朝廷にだよ」
「・・・それだけ?」
鈴凛が眉を寄せる。
「そう,それだけ。でも,大和朝廷の貴族達にとっては,それで十分だったんだよ。なにしろ,抵抗する製鉄民達を死人と同じ扱いにしたからね」
「どういうことですの?」
白雪も眉を寄せる。
「『鬼』イコール『怪物』というイメージが今は強いけど,『鬼』という漢字はもともと『死者』という意味があるんだ」
「え,そうなの?」
「そうなんです。『死ぬ』ということを『鬼籍に入る』ともいいますからね。日本でも『鬼=死者』という意味はありますよ」
鞠絵が補足する。
「うん,よく調べたね。つまり,『大和朝廷に抵抗した製鉄民=死んだも同然=鬼』ということかな」
「それはひどいですの・・・」
「それだけじゃないよ。抵抗する製鉄民に,大和朝廷はさらに『呪い』をかけたんだ。今も続く『呪い』をね」
「今も続く・・・ですの?」
「ヒントは子どもの頃,誰もが必ずやった遊びだよ」
「う〜んと・・・あ,『鬼ごっこ』ですの!」
「ご名答」
「でもさアニキ,『鬼ごっこ』がどうかしたの?ただの子どもの遊びでしょ?」
「そういうと思った。じゃあ,ルールを説明してごらん,白雪」
「はいですの。まず,じゃんけんで鬼を決めて,みんなで逃げ回って,鬼がそれを追っかけるですの。で,鬼に捕まったらその人が今度は鬼になって,同じことをするですの。にいさま,これでいいですの?」
「うん,ありがとう。それが答えだよ」
「・・・兄上様,どういうことですか?」
「『鬼に捕まる』ということは,『鬼に触られる』,すなわち『鬼と接触する』ということを意味してるんだよ。つまり,大和朝廷に抵抗する製鉄民と接触する者は,同様に『鬼』と見なすということさ。だからみんな『鬼』から逃げるんだよ。朝廷に討伐されて,殺されて,本当の『鬼』になってしまうから」
「・・・」
妹達は沈黙したまま航を見つめる。
「『鬼ごっこ』は,そういうことを子どもの頃から脳みそに刷り込むための遊びなんだよ。最初に考えたやつは頭がいいね」
「・・・」
少しして鈴凛が口を開いた。
「ちっちゃい頃さ,さんざんみんなで鬼ごっこをして遊んだけど,そんなに深い意味があるとは知らなかったなあ・・・でもそれホント?いや,アニキを疑うわけじゃないけどね。なんかイキナリそんなこと言われても信じられなくてさ〜」
航が苦笑する。
「まあ,それもそうだな。でも,遊びの内容だけなら,『追いかけっこ』でもいいはずだろ?何でわざわざ『鬼』をつける必要がある?しかも『ごっこ』だろ?字面だけなら,『鬼になったらこういう扱いを受ける』というシミュレーションってことだな」
「そっか,そうだよね・・・」
「つまり私達は,子どもの頃から無意識のうちに,『鬼は悪』ということを刷り込まれていたということですね」
鞠絵がまとめる。
「そういうこと。『鬼』については以上かな」
航が軽く背伸びをする。
「ここで少し休憩にしようか。お前らもさっき言ったことをノートにまとめておけよ。後で苦労するぞ」
「え〜,アニキ手伝ってくれないの〜?」
「後でチェックはするけど,最初からはダメ。こういうのは自分でまずしないとな」
「はいですの・・・」
鈴凛と白雪がしょげる。それを見て鞠絵がクスリと笑った。
「私の部屋でまとめませんか?紅茶をお入れしますね。お菓子もありますよ」
「やったー!」
「うれしいですの!」
「じゃあ,お言葉に甘えようかな。日も傾いてきたし。鞠絵の部屋にお邪魔するね」
「はい,歓迎いたします。兄上様」
※※※
「明日には・・・」といっておきながら,日が経ってしまいました。
すいません・・・
ということで,第8話です。
航くんのセリフが,宗像教授とQEDの祟を足したみたいになってますね・・・
コメントレスは明日します〜
「その答えはこれから分かるよ」
航は言葉を続ける。
「最後は,いよいよ『鬼』についてだね。まず,鬼といったら何を連想する?」
「えーと,上半身裸で頭に角が生えてて虎縞のパンツをはいている・・・かなあ」
「全身が赤か青で,髪の毛がもじゃもじゃで,鉄の棍棒をもってるですの」
「うん。絵本だとそういう鬼が多いね。他には?」
「そうですね・・・」
鞠絵が少し首をかしげる。
「人里近くではなく,山奥の洞窟に住んでいるイメージがありますね」
「なるほど。これで『鬼』のイメージが大体出揃ったかな」
航が妹達を見回した。
「じゃあ,謎解きを始めようか。最初に言っとくけど,生物学的に『鬼』という種は存在しないよ。当然だけどね。『鬼』と呼ばれた人達がいただけだ」
「!」
鈴凛と白雪が驚く。鞠絵は予想していたのか表情を変えなかった。
「アニキ,『鬼』って人間だったの?」
「そうだよ。ある特定の人間の集団のことなんだ」
「集団・・・ですの?」
「上半身裸で,鉄棒を持ってて,山に住む集団・・・鞠絵,どうかな?」
「製鉄民のことですね」
「せいてつみん・・・て何?」
「山で鉄を作って暮らしていた人達のことですよ。農機具や武器も鉄がないとできませんからね。今も昔も,とても大事な産業です。もちろん,その人達は鉄だけを作っていたわけじゃないですけどね」
「山で鉄を?どうやってですの?」
「鉄ってさ,鉄鉱石と石炭で作るんじゃないの?」
その問いには航が答えた。
「今はね。実はそっちの方は,まだまだ歴史的に新しいんだ。日本では昔は・・・といっても,江戸時代や明治時代のことだからそんなに昔じゃないけど,鉄は砂鉄と木炭からつくってたんだ」
「砂鉄って,砂場の中に磁石を入れたら採れるやつだよね。木炭って備長炭とかのこと?」
「そうだよ。しかしよく備長炭なんて知ってるな」
「いや〜,焼鳥屋さんには必ず『備長炭使用』って書いてあるからさ」
「鈴凛ちゃんは焼鳥屋さんに行くんですか?」
鞠絵の問いに,鈴凛はなぜか焦った。
「いやーっ,夕方になると美味しそうな匂いがするからさ〜。つい買っちゃうんだよね〜。あ,でも焼き鳥だけだよ」
「当たり前だろ。一緒にビールなんか買うなよ。未成年なんだから」
「ギクッ」
「鈴凛ちゃん,今のリアクション変ですの」
「あはははははは・・・」
「・・・まあそれについては後でじっくり聞くことにしよう。話を戻すぞ」
航が一つ咳払いをする。
「製鉄民は山の中で鉄を作っていたから,『鉄の棒』と『上半身裸』は納得かな?」
「うん。でも角と虎のパンツと肌の色は?」
「角と虎縞の下着は,陰陽道の『鬼門』に関係するらしいね」
「『鬼門』・・・というと,丑寅の方角で,今だと東北ということでしょうか?」
「・・・分かったですの!『丑』は『牛』で二本の角,『寅』は『虎』で虎縞のパンツですの!」
「でもさ,一本角の鬼もいるよ?」
「うう,そうでしたの・・・」
「いや,いいところまで行ったよ。『鬼』は仏教が伝わってから,『地獄の獄卒』っていうイメージも追加されたからね。そこで一本角や二本角の鬼ができたのかもしれない。なぜか三本角以上の鬼は見ないけどね・・・逆に言うと,そのおかげで『鬼』はより恐ろしい存在になってしまったともいえるけど」
「兄上様,鬼の肌の色はどうなんでしょうか?」
「ああ,それが残っていたね。鉄を作るわけだから,炉の照り返しで日焼けみたいに肌が赤くなったのじゃないかな?」
「アニキ,それだと青鬼の説明がつかないよ?」
「うん,まだ説明が不十分だったね・・・。製鉄民は山で暮らしていたわけだから,当然鉄以外の鉱物も詳しかったんじゃないかな。とすると,鬼の赤の色は『辰砂』すなわち『丹』,青の色は『岩緑青(マラカイトグリーン)』を表していたと考えられるんだ」
「にいさま,その『丹』と『岩緑青』って何に使ってたんですの?」
「『丹』は水銀でね,漢方薬や建物の塗料として使ってたんだ。『丹』を塗ると,赤色というより鮮やかな朱色かな。神社の鳥居の色だよ。『岩緑青』は緑色の塗料だね」
「え,アニキ,水銀って有毒じゃあ・・・」
「その通り。微量でも水銀中毒をおこして,最悪死んでしまう。でも,昔は不老不死になるための薬だとか言われて珍重された」
「うわあ・・・」
「まあ,そういった山の鉱物のスペシャリストでもあったということだね」
「・・・あのさ,アニキ」
「ん,何かな」
「製鉄民の人達ってさ,自分達で鉄を作ったり,鉱物を掘ってたりしてたんだよね?」
「そうだよ」
「じゃあ,なんで『鬼』って呼ばれたり,退治されたりしなくちゃいけないわけ?」
「そうですの。その人達は,何も悪いことをしていないですの!」
「それはね」
航はさらりと言った。
「抵抗したからさ」
「え,何に?」
「大和朝廷にだよ」
「・・・それだけ?」
鈴凛が眉を寄せる。
「そう,それだけ。でも,大和朝廷の貴族達にとっては,それで十分だったんだよ。なにしろ,抵抗する製鉄民達を死人と同じ扱いにしたからね」
「どういうことですの?」
白雪も眉を寄せる。
「『鬼』イコール『怪物』というイメージが今は強いけど,『鬼』という漢字はもともと『死者』という意味があるんだ」
「え,そうなの?」
「そうなんです。『死ぬ』ということを『鬼籍に入る』ともいいますからね。日本でも『鬼=死者』という意味はありますよ」
鞠絵が補足する。
「うん,よく調べたね。つまり,『大和朝廷に抵抗した製鉄民=死んだも同然=鬼』ということかな」
「それはひどいですの・・・」
「それだけじゃないよ。抵抗する製鉄民に,大和朝廷はさらに『呪い』をかけたんだ。今も続く『呪い』をね」
「今も続く・・・ですの?」
「ヒントは子どもの頃,誰もが必ずやった遊びだよ」
「う〜んと・・・あ,『鬼ごっこ』ですの!」
「ご名答」
「でもさアニキ,『鬼ごっこ』がどうかしたの?ただの子どもの遊びでしょ?」
「そういうと思った。じゃあ,ルールを説明してごらん,白雪」
「はいですの。まず,じゃんけんで鬼を決めて,みんなで逃げ回って,鬼がそれを追っかけるですの。で,鬼に捕まったらその人が今度は鬼になって,同じことをするですの。にいさま,これでいいですの?」
「うん,ありがとう。それが答えだよ」
「・・・兄上様,どういうことですか?」
「『鬼に捕まる』ということは,『鬼に触られる』,すなわち『鬼と接触する』ということを意味してるんだよ。つまり,大和朝廷に抵抗する製鉄民と接触する者は,同様に『鬼』と見なすということさ。だからみんな『鬼』から逃げるんだよ。朝廷に討伐されて,殺されて,本当の『鬼』になってしまうから」
「・・・」
妹達は沈黙したまま航を見つめる。
「『鬼ごっこ』は,そういうことを子どもの頃から脳みそに刷り込むための遊びなんだよ。最初に考えたやつは頭がいいね」
「・・・」
少しして鈴凛が口を開いた。
「ちっちゃい頃さ,さんざんみんなで鬼ごっこをして遊んだけど,そんなに深い意味があるとは知らなかったなあ・・・でもそれホント?いや,アニキを疑うわけじゃないけどね。なんかイキナリそんなこと言われても信じられなくてさ〜」
航が苦笑する。
「まあ,それもそうだな。でも,遊びの内容だけなら,『追いかけっこ』でもいいはずだろ?何でわざわざ『鬼』をつける必要がある?しかも『ごっこ』だろ?字面だけなら,『鬼になったらこういう扱いを受ける』というシミュレーションってことだな」
「そっか,そうだよね・・・」
「つまり私達は,子どもの頃から無意識のうちに,『鬼は悪』ということを刷り込まれていたということですね」
鞠絵がまとめる。
「そういうこと。『鬼』については以上かな」
航が軽く背伸びをする。
「ここで少し休憩にしようか。お前らもさっき言ったことをノートにまとめておけよ。後で苦労するぞ」
「え〜,アニキ手伝ってくれないの〜?」
「後でチェックはするけど,最初からはダメ。こういうのは自分でまずしないとな」
「はいですの・・・」
鈴凛と白雪がしょげる。それを見て鞠絵がクスリと笑った。
「私の部屋でまとめませんか?紅茶をお入れしますね。お菓子もありますよ」
「やったー!」
「うれしいですの!」
「じゃあ,お言葉に甘えようかな。日も傾いてきたし。鞠絵の部屋にお邪魔するね」
「はい,歓迎いたします。兄上様」
※※※
「明日には・・・」といっておきながら,日が経ってしまいました。
すいません・・・
ということで,第8話です。
航くんのセリフが,宗像教授とQEDの祟を足したみたいになってますね・・・
コメントレスは明日します〜
「北斗の拳」の千葉繁風にお読みください
桃太郎伝説に隠された謎とは?
退治された鬼「温羅」が残した莫大な財宝の正体は?
「鬼退治」の真実を航の頭脳が解き明かす時,
闇の大和朝廷特殊部隊通称「八咫烏」が静かに鞠絵の療養所に迫る!
ミカエルが吠え,鈴凛特製強化水鉄砲が唸り,白雪のフライパンが炸裂する!
航達は生き延びることができるか?
そして,歴史の闇が今暴かれる!
次回,シスター・プリンセス
「天よ,鬼達の慟哭を聞け!炸裂せよ兄妹の怒りの涙!」
お楽しみに!
※※※
・・・もちろん嘘です
どーみてもシスプリのタイトルではありません。
シスプリRPGに近いかも(それでもこんなに熱くない)
今続きを書いてるのですが,なかなかまとまらなくて・・・
仕事中に「あーでもないこーでもない」と頭をひねってます。
これはこれで楽しいですけどね〜
明日には何とか。
<コメントレスです>
A2大兄
>まぁなんだ・・・
>クソワラタwwww
>俺はただの保守要員ですから///
おお,A2大兄ではありませんか!
コメントありがとうございます。
保守要員なんてそんなそんな。大兄がいらっしゃるからこそ,みんな毎月のあの規則正しい暴走が楽しめるんですよ!
来月もよろしくお願いしますね。
桃太郎伝説に隠された謎とは?
退治された鬼「温羅」が残した莫大な財宝の正体は?
「鬼退治」の真実を航の頭脳が解き明かす時,
闇の大和朝廷特殊部隊通称「八咫烏」が静かに鞠絵の療養所に迫る!
ミカエルが吠え,鈴凛特製強化水鉄砲が唸り,白雪のフライパンが炸裂する!
航達は生き延びることができるか?
そして,歴史の闇が今暴かれる!
次回,シスター・プリンセス
「天よ,鬼達の慟哭を聞け!炸裂せよ兄妹の怒りの涙!」
お楽しみに!
※※※
・・・もちろん嘘です
どーみてもシスプリのタイトルではありません。
シスプリRPGに近いかも(それでもこんなに熱くない)
今続きを書いてるのですが,なかなかまとまらなくて・・・
仕事中に「あーでもないこーでもない」と頭をひねってます。
これはこれで楽しいですけどね〜
明日には何とか。
<コメントレスです>
A2大兄
>まぁなんだ・・・
>クソワラタwwww
>俺はただの保守要員ですから///
おお,A2大兄ではありませんか!
コメントありがとうございます。
保守要員なんてそんなそんな。大兄がいらっしゃるからこそ,みんな毎月のあの規則正しい暴走が楽しめるんですよ!
来月もよろしくお願いしますね。
・・・ということで,5/16の春歌ちゃん誕生日祝い祭りは無事完走いたしました。
参加されました兄君様,お疲れさまでした。
今回も,A2兄による見事な誘導&とりまとめで,ひじょーに気持ちいい!(アクエリオン風に)お祭りでしたね。
A2兄は,まさに「大兄」と呼ぶにふさわしいシスプリ梁山泊の総帥です!
今後ともよろしく・・・(メガテンの仲魔風に)
私は連日PCの前で寝オチでしたが・・・(かなり情けないのと今もリアル嫁からの視線が痛い)
なんで今頃感想を・・・とお思いの方が多数いらっしゃると思いますが,それは「やっと昨日溜まった仕事が片付いた」んですよ。
春歌ちゃん祭りの最中は,
職場でPCのキーボードを叩いて携帯にメッセージ送付
↓
携帯からカキコ
↓
PCでスレをチェキ!
↓
最初に戻る
を繰り返していたもんで,緊急のもの以外仕事が止まっていたんですね〜
ということで,週明けは残務処理と相成りました。
社会人失格なんていまさら・・・(笑)
ところで,今回初めてトリップなるものをつけてみました。
偽物予防というよりも「試しにやってみようかな」という軽い気持ちだったのですが・・・
私ださんには,「挑戦者」とほめられてしまいました(違
2ちゃんねるのVIP板に,素に近いハンドルネームで参加するというのは,「念」を覚えずに「天空闘技場」に来てしまったゴンとキルアみたいなものですか(HUNTER×HUNTERネタでした)
でも,このブログの訪問者数とかは特に変化がないようですが・・・
シスプリの辺境サイト中の辺境サイト(塾長さんより拝借)とは,まさにウチのことかと・・・orz
ちなみに,来月6/21(土)は,チェキッ娘四葉ちゃんの誕生日です。
これまた兄チャマが多数参加(襲来ともいう)することとなるでしょう。
私の出勤スケジュールを確認すると,翌6/22(日)は休み!
キタ*・゜゚・*:.。..。.:*・゜(゚∀゚)゚・*:.。. .。.:*・゜゚・*!!!!!
徹夜で参加ケテーイ!
<春歌ちゃん祭りの捕捉とかいろいろです>
ヤバタ様さん
(なんか日本語がおかしい)
アイコン漫画で大笑い(も・ち・ろ・ん職場で)
塾長さん
春歌ちゃん祭りでイラスト作成中!
完成を心よりお待ちしております。
K2さん
「ねんどろりど春歌」絶賛発売中!
(注:ウソです。リアルだったら即箱買いするっちゅーの)
散露さん
トップ絵に鎧をまとった春歌ちゃんキターッ!
以前から「春歌ちゃんって,歴史上の人物の誰かに似ているんだよな・・・」と思っていたのですが,この凛々しい姿を見てやっと思い出しました。
「巴御前」です。
馬上から薙刀をふるって,源平合戦時に活躍した木曽義仲の奥さんですね。
キャラコレだと,春歌ちゃんは自分のことを源氏物語の「紫の上」だといってますが,兄君様に近付く不逞の輩をばっさばっさと辻斬りすることを考えると,「巴御前」の方が近いかと(笑)
k16rさん
やる夫はやる夫でも,今回の祭りはこんな感じでした↓
____
/ \ 仕事が終わらないお。お祭りに参加できないお。
/ _ノ ヽ、_ \
/ o゚((●)) ((●))゚o \
| (__人__) |
\ ` ⌒´ /
/´ `\
/ / l l .___
__l l_¶______/_/__/ ヽ
\, ´-'ヽ  ̄| ̄ ̄ ̄ ̄| l二二二二l
ヾ_ノ | '''' ' | l二二二二l
| 9=ε-8. | '''..-- | l二二二二l:::..
| ..'' | ''-. ,|
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
つ,次回こそは・・・
そして,私だ!さんで反省会を絶賛開催中です!
A2兄,武者鞠絵,鈴凛ちゃん,桜木さん,私・・・なんというカオス!
参加されました兄君様,お疲れさまでした。
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今後ともよろしく・・・(メガテンの仲魔風に)
私は連日PCの前で寝オチでしたが・・・(かなり情けないのと今もリアル嫁からの視線が痛い)
なんで今頃感想を・・・とお思いの方が多数いらっしゃると思いますが,それは「やっと昨日溜まった仕事が片付いた」んですよ。
春歌ちゃん祭りの最中は,
職場でPCのキーボードを叩いて携帯にメッセージ送付
↓
携帯からカキコ
↓
PCでスレをチェキ!
↓
最初に戻る
を繰り返していたもんで,緊急のもの以外仕事が止まっていたんですね〜
ということで,週明けは残務処理と相成りました。
社会人失格なんていまさら・・・(笑)
ところで,今回初めてトリップなるものをつけてみました。
偽物予防というよりも「試しにやってみようかな」という軽い気持ちだったのですが・・・
私ださんには,「挑戦者」とほめられてしまいました(違
2ちゃんねるのVIP板に,素に近いハンドルネームで参加するというのは,「念」を覚えずに「天空闘技場」に来てしまったゴンとキルアみたいなものですか(HUNTER×HUNTERネタでした)
でも,このブログの訪問者数とかは特に変化がないようですが・・・
シスプリの辺境サイト中の辺境サイト(塾長さんより拝借)とは,まさにウチのことかと・・・orz
ちなみに,来月6/21(土)は,チェキッ娘四葉ちゃんの誕生日です。
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以前から「春歌ちゃんって,歴史上の人物の誰かに似ているんだよな・・・」と思っていたのですが,この凛々しい姿を見てやっと思い出しました。
「巴御前」です。
馬上から薙刀をふるって,源平合戦時に活躍した木曽義仲の奥さんですね。
キャラコレだと,春歌ちゃんは自分のことを源氏物語の「紫の上」だといってますが,兄君様に近付く不逞の輩をばっさばっさと辻斬りすることを考えると,「巴御前」の方が近いかと(笑)
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やる夫はやる夫でも,今回の祭りはこんな感じでした↓
____
/ \ 仕事が終わらないお。お祭りに参加できないお。
/ _ノ ヽ、_ \
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つ,次回こそは・・・
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A2兄,武者鞠絵,鈴凛ちゃん,桜木さん,私・・・なんというカオス!
(その2 おじいさんとおばあさんと楽しいお家)
「次に,おじいさんとおばあさんについて考えてみようか。まず,この二人はどこに住んでいたのか?」
「ん〜と,山のふもとで川の近くじゃないかな・・・」
航の問いかけに鈴凛が答えた。
「ふむ,その理由は?」
「おじいさんは山へ芝刈りに,おばあさんは川で洗濯に・・・ってありますの」
次は白雪が答える。
「なるほど。じゃあ,どうやってこの二人は生活してたのだろう?」
続いて航が質問する。
「・・・アニキ,おじいさんとおばあさんの仕事って関係あるの?」
「この後に関係してくるんだよ。さて,どうかな。鞠絵?」
「はい。おじいさんは山で薪を拾って町に売りに行っていた,またおばあさんは洗濯屋さんをしていた,と考えることができます。二人には子どもがいませんので,年をとってからの農業はきつかったかもしれませんし,住んでいる場所が農業に適さなかったのかもしれません。ともかく,これで現金収入があるので,米などを買って生活していたと考えられます」
「ありがとう。つまり二人は,村から少し離れた場所に住んでいた可能性が高い,ということだな」
「はい。桃太郎には村人が登場しませんので・・・ただし,これは話の筋に関係しないからかもしれません」
「でもさ,二人が川沿いに住んでいたから,この後桃太郎との衝撃的な出会いにつながるってわけだね」
「そういうこと」
「どうして川沿いには,人があまり住まなかったですの?」
白雪が首をかしげる。
「全く住んでいなかったというわけじゃないけど,昔はちょっと雨が降っただけですぐに川が氾濫したからね。危なすぎるよ」
「にいさま,じゃあなぜ,おじいさんとおばあさんは,そういうところに住んでたんですの?」
「うーん,確かに。そうだなあ・・・そこまでは考えてなかったなあ・・・」
航が言葉に詰まってうつむいた。
「白雪ちゃん,それはきっとさ,川に河童がいたからだよ!村人は河童に襲われるがいやだったんだね。アハハ」
鈴凛が軽くいった言葉に,航が顔を上げる。
「!」
「アニキ,どうかした?」
鈴凛の方が驚く。
「そういう考えもあるか・・・なるほど・・・でもまだ推測の域を出ないな・・・」
「兄上様?」
鞠絵も不思議そうに航の方を見た。
「あ,ごめんごめん。ちょっと考え事をしてた。鈴凛,いいヒントになったよ」
「え・・・うん。何が何だがわかんないんだけど?」
「河童の話はまた別の機会にしよう。これはこれで色々とあるから」
「そうなの?」
「そうなんだよ。語り出すと一晩どころじゃ済まないから」
「じゃあ,またレポートのネタができるね!」
「あのな・・・とりあえず,おじいさんとおばあさんについては,ここまでにしよう」
「はーい」
(その3 百鬼夜行)
「さて,ここで問題です。この質問は,桃太郎という話の中で非常に重要なポイントとなってます。いいかな?」
航が三人を見回した。
「おじいさんとおばあさんは,鬼の直接の被害者でしょうか?」
「え・・・なんですの?」
「は・・・どういうこと?」
「え・・・と・・・どうなんでしょう?」
三人とも,頭から?マークを出している。
「鞠絵もここまでは思いつかなかったかな?」
航が少し面白そうな表情をしながら,鞠絵に尋ねる。
「はい・・・鬼については調べましたが・・・」
鈴凛が問いかける。
「で,アニキ,答えは?」
航があっさりと答えた。
「Noだよ」
「!」
三人とも目を丸くしている。
「話の筋をもう一度思い出してごらん。おじいさんは,鬼と会った可能性が低い,というか多分会ったことはない。『鬼』を知っていても,あくまでも噂のレベルだね」
「何でそう言い切れるの?」
鈴凛が不思議そうにいう。
「おじいさんの仕事だよ」
「?」
「鬼達によって,家々に火がつけられて財産を奪われて人々が逃げまどう中,おじいさんは,『今日の晩ご飯を作るのに,薪はいりませんかー』と薪を売り歩いていたのか?」
「・・・あ,そっか」
鈴凛が納得する。
「それはシュールすぎますの・・・」
白雪も納得したようだ。
「そうですね・・・それにおばあさんも,町から避難する人たちが船や徒歩で逃げている横で,じゃぶじゃぶと悠長に洗濯をしていたとは考えられませんね」
鞠絵が微笑みながら補足する。
「確かに・・・」
「つまり,『鬼』による被害者はいないということだね。少なくともおじいさんとおばあさんの近くには。そして,桃太郎の周りにも」
「えええ,それじゃあ桃太郎の前提が崩れちゃうよ!」
「ですの!」
「どんな前提かな?」
航は,答えを知っているがあえて尋ねるという口調でいった。
「鬼がひどいすることをするから,桃太郎が退治するっていうさ・・・」
航はさらりといった。
「鬼は悪くないんだから当然だな」
「・・・え?」
鈴凛と白雪はあぜんとしている。
鞠絵はこのことを予想していたのか,微笑んだままである。
「じゃあ『鬼』の存在って・・・なんなの,アニキ?」
「それも後で検討することとして,先に重要な脇役を見ようか」
「もー,じらさないでほしいなあ」
「こういうのには順序っていうのがあるんだよ」
航がなだめるようにいった。
(その4 犬,猿,雉って三銃士?)
「次に桃太郎の従者,犬・猿・雉について考えようか。まず,動物はしゃべらない」
ワン!
ミカエルが吠えた。抗議しているようだ。
「・・・訂正しよう。動物は人間の言葉を使ってコミュニケーションをとらない」
「何か言葉が難しいですの」
「オウムやインコは人間の言葉を真似することができますからね」
鞠絵がフォローする。
「なるほどですの・・・」
「じゃあさ,犬・猿・雉って人間だったってこと?」
「そういうことかな。特殊な能力を持った人間という可能性もあるんだけど」
「犬のように鼻が利くとか,猿のように木登りがうまいとか,雉・・・は何だろう?ハンググライダーでも使わない限り,空は飛べないよね・・・」
鈴凛が一人で悩んでいる。
「まあ,これにもいろいろと説があるんだけど。三者に共通しているのは,『もともと桃太郎の家族ではない』ということだね。鬼ヶ島に行くまでの中途採用組だ」
「なんか,サラリーマンの転職みたいだよ」
「そうですね,ふふ」
「それ,半分以上正解」
航が苦笑する。
「ええ!!」
「サラリーマンにとっての給料は現金,じゃあ犬・猿・雉にとっての給料は?」
「えーと・・・黍団子ですの!」
「ということで,次は黍団子についてかな」
(その5 魔法の団子,その名は黍団子)
「そもそも,日本の昔話で黍団子はあまり出てこないよね」
「そうですね・・・どちらかというと,おむすびのほうが多いでしょうか?」
鞠絵が同意する。
「猿蟹合戦とかおむすびころりんだよね」
鈴凛が例を挙げた。
「つまり,桃太郎にわざわざ黍団子がでてくるということは,それに何らかの意味があると考えられるんだ。江戸時代には,ある神社の名物に黍団子っていうのがあったらしいよ」
「へえ,どこなんですの?」
「岡山県の吉備津神社。ちなみに岡山県は,かつて吉備の国と呼ばれていたんだ」
「え!じゃあ”黍”団子は”吉備”団子ってこと?」
「そういうこと。今ではフツーに吉備団子としておみやげで売ってるけど」
「しかも,岡山県は,桃太郎発祥の地として一番有名なんです」
鞠絵が説明を追加する。
「それってさ,アニキが最初にいってた『桃太郎は歴史的事実を反映している』ってことにつながるの!」
「すごいですの!」
鈴凛と白雪が興奮している。しかし,鞠絵は冷静に航に問いかけた。
「では兄上様は,吉備団子を実際はどういったものだったとお考えですか?お菓子・・・ではないですよね」
「もちろんだよ。黍=吉備で,団子=おいしいものとするなら,黍団子が意味するのは,そのものズバリ『吉備の国の利権』もしくは『支配権』ということだな。途中で桃太郎は黍団子を食べていないのに,犬・猿・雉にだけ分け与えているというのも,これで説明が付くし」
鞠絵が少し悲しげな目をした。
「・・・やはり兄上様も,犬・猿・雉は,桃太郎が提示した吉備の国での利権につられて,鬼退治に加わったとお考えですね」
「うん。それ以外に考えられないね」
それを聞いて,鈴凛と白雪が戸惑った表情を浮かべる。
「そんな・・・どっちが悪役なんだよ」
「ですの・・・」
ゆたんぽさん,いつもありがとうございます。
最初この話は,航と鞠絵ちゃんだけで書こうかな〜と考えていたのですが,「他の妹達を混ぜたらどうなるんだろう・・・」とふと思いついて,やってみたらこんなカオス状態に(笑)
航と鈴凛の会話は,ボケとツッコミのかけあいでこんなことに・・・
あと,鞠絵ちゃんはこの後にたっぷり出てきます(予定です・・・)
「次に,おじいさんとおばあさんについて考えてみようか。まず,この二人はどこに住んでいたのか?」
「ん〜と,山のふもとで川の近くじゃないかな・・・」
航の問いかけに鈴凛が答えた。
「ふむ,その理由は?」
「おじいさんは山へ芝刈りに,おばあさんは川で洗濯に・・・ってありますの」
次は白雪が答える。
「なるほど。じゃあ,どうやってこの二人は生活してたのだろう?」
続いて航が質問する。
「・・・アニキ,おじいさんとおばあさんの仕事って関係あるの?」
「この後に関係してくるんだよ。さて,どうかな。鞠絵?」
「はい。おじいさんは山で薪を拾って町に売りに行っていた,またおばあさんは洗濯屋さんをしていた,と考えることができます。二人には子どもがいませんので,年をとってからの農業はきつかったかもしれませんし,住んでいる場所が農業に適さなかったのかもしれません。ともかく,これで現金収入があるので,米などを買って生活していたと考えられます」
「ありがとう。つまり二人は,村から少し離れた場所に住んでいた可能性が高い,ということだな」
「はい。桃太郎には村人が登場しませんので・・・ただし,これは話の筋に関係しないからかもしれません」
「でもさ,二人が川沿いに住んでいたから,この後桃太郎との衝撃的な出会いにつながるってわけだね」
「そういうこと」
「どうして川沿いには,人があまり住まなかったですの?」
白雪が首をかしげる。
「全く住んでいなかったというわけじゃないけど,昔はちょっと雨が降っただけですぐに川が氾濫したからね。危なすぎるよ」
「にいさま,じゃあなぜ,おじいさんとおばあさんは,そういうところに住んでたんですの?」
「うーん,確かに。そうだなあ・・・そこまでは考えてなかったなあ・・・」
航が言葉に詰まってうつむいた。
「白雪ちゃん,それはきっとさ,川に河童がいたからだよ!村人は河童に襲われるがいやだったんだね。アハハ」
鈴凛が軽くいった言葉に,航が顔を上げる。
「!」
「アニキ,どうかした?」
鈴凛の方が驚く。
「そういう考えもあるか・・・なるほど・・・でもまだ推測の域を出ないな・・・」
「兄上様?」
鞠絵も不思議そうに航の方を見た。
「あ,ごめんごめん。ちょっと考え事をしてた。鈴凛,いいヒントになったよ」
「え・・・うん。何が何だがわかんないんだけど?」
「河童の話はまた別の機会にしよう。これはこれで色々とあるから」
「そうなの?」
「そうなんだよ。語り出すと一晩どころじゃ済まないから」
「じゃあ,またレポートのネタができるね!」
「あのな・・・とりあえず,おじいさんとおばあさんについては,ここまでにしよう」
「はーい」
(その3 百鬼夜行)
「さて,ここで問題です。この質問は,桃太郎という話の中で非常に重要なポイントとなってます。いいかな?」
航が三人を見回した。
「おじいさんとおばあさんは,鬼の直接の被害者でしょうか?」
「え・・・なんですの?」
「は・・・どういうこと?」
「え・・・と・・・どうなんでしょう?」
三人とも,頭から?マークを出している。
「鞠絵もここまでは思いつかなかったかな?」
航が少し面白そうな表情をしながら,鞠絵に尋ねる。
「はい・・・鬼については調べましたが・・・」
鈴凛が問いかける。
「で,アニキ,答えは?」
航があっさりと答えた。
「Noだよ」
「!」
三人とも目を丸くしている。
「話の筋をもう一度思い出してごらん。おじいさんは,鬼と会った可能性が低い,というか多分会ったことはない。『鬼』を知っていても,あくまでも噂のレベルだね」
「何でそう言い切れるの?」
鈴凛が不思議そうにいう。
「おじいさんの仕事だよ」
「?」
「鬼達によって,家々に火がつけられて財産を奪われて人々が逃げまどう中,おじいさんは,『今日の晩ご飯を作るのに,薪はいりませんかー』と薪を売り歩いていたのか?」
「・・・あ,そっか」
鈴凛が納得する。
「それはシュールすぎますの・・・」
白雪も納得したようだ。
「そうですね・・・それにおばあさんも,町から避難する人たちが船や徒歩で逃げている横で,じゃぶじゃぶと悠長に洗濯をしていたとは考えられませんね」
鞠絵が微笑みながら補足する。
「確かに・・・」
「つまり,『鬼』による被害者はいないということだね。少なくともおじいさんとおばあさんの近くには。そして,桃太郎の周りにも」
「えええ,それじゃあ桃太郎の前提が崩れちゃうよ!」
「ですの!」
「どんな前提かな?」
航は,答えを知っているがあえて尋ねるという口調でいった。
「鬼がひどいすることをするから,桃太郎が退治するっていうさ・・・」
航はさらりといった。
「鬼は悪くないんだから当然だな」
「・・・え?」
鈴凛と白雪はあぜんとしている。
鞠絵はこのことを予想していたのか,微笑んだままである。
「じゃあ『鬼』の存在って・・・なんなの,アニキ?」
「それも後で検討することとして,先に重要な脇役を見ようか」
「もー,じらさないでほしいなあ」
「こういうのには順序っていうのがあるんだよ」
航がなだめるようにいった。
(その4 犬,猿,雉って三銃士?)
「次に桃太郎の従者,犬・猿・雉について考えようか。まず,動物はしゃべらない」
ワン!
ミカエルが吠えた。抗議しているようだ。
「・・・訂正しよう。動物は人間の言葉を使ってコミュニケーションをとらない」
「何か言葉が難しいですの」
「オウムやインコは人間の言葉を真似することができますからね」
鞠絵がフォローする。
「なるほどですの・・・」
「じゃあさ,犬・猿・雉って人間だったってこと?」
「そういうことかな。特殊な能力を持った人間という可能性もあるんだけど」
「犬のように鼻が利くとか,猿のように木登りがうまいとか,雉・・・は何だろう?ハンググライダーでも使わない限り,空は飛べないよね・・・」
鈴凛が一人で悩んでいる。
「まあ,これにもいろいろと説があるんだけど。三者に共通しているのは,『もともと桃太郎の家族ではない』ということだね。鬼ヶ島に行くまでの中途採用組だ」
「なんか,サラリーマンの転職みたいだよ」
「そうですね,ふふ」
「それ,半分以上正解」
航が苦笑する。
「ええ!!」
「サラリーマンにとっての給料は現金,じゃあ犬・猿・雉にとっての給料は?」
「えーと・・・黍団子ですの!」
「ということで,次は黍団子についてかな」
(その5 魔法の団子,その名は黍団子)
「そもそも,日本の昔話で黍団子はあまり出てこないよね」
「そうですね・・・どちらかというと,おむすびのほうが多いでしょうか?」
鞠絵が同意する。
「猿蟹合戦とかおむすびころりんだよね」
鈴凛が例を挙げた。
「つまり,桃太郎にわざわざ黍団子がでてくるということは,それに何らかの意味があると考えられるんだ。江戸時代には,ある神社の名物に黍団子っていうのがあったらしいよ」
「へえ,どこなんですの?」
「岡山県の吉備津神社。ちなみに岡山県は,かつて吉備の国と呼ばれていたんだ」
「え!じゃあ”黍”団子は”吉備”団子ってこと?」
「そういうこと。今ではフツーに吉備団子としておみやげで売ってるけど」
「しかも,岡山県は,桃太郎発祥の地として一番有名なんです」
鞠絵が説明を追加する。
「それってさ,アニキが最初にいってた『桃太郎は歴史的事実を反映している』ってことにつながるの!」
「すごいですの!」
鈴凛と白雪が興奮している。しかし,鞠絵は冷静に航に問いかけた。
「では兄上様は,吉備団子を実際はどういったものだったとお考えですか?お菓子・・・ではないですよね」
「もちろんだよ。黍=吉備で,団子=おいしいものとするなら,黍団子が意味するのは,そのものズバリ『吉備の国の利権』もしくは『支配権』ということだな。途中で桃太郎は黍団子を食べていないのに,犬・猿・雉にだけ分け与えているというのも,これで説明が付くし」
鞠絵が少し悲しげな目をした。
「・・・やはり兄上様も,犬・猿・雉は,桃太郎が提示した吉備の国での利権につられて,鬼退治に加わったとお考えですね」
「うん。それ以外に考えられないね」
それを聞いて,鈴凛と白雪が戸惑った表情を浮かべる。
「そんな・・・どっちが悪役なんだよ」
「ですの・・・」
(つづく)
※※※
ということで第7話です。
あああ,春歌ちゃんの誕生日までには終わらせるつもりだったのに〜
<コメントレスです>
ということで第7話です。
あああ,春歌ちゃんの誕生日までには終わらせるつもりだったのに〜
<コメントレスです>
ゆたんぽさん,いつもありがとうございます。
最初この話は,航と鞠絵ちゃんだけで書こうかな〜と考えていたのですが,「他の妹達を混ぜたらどうなるんだろう・・・」とふと思いついて,やってみたらこんなカオス状態に(笑)
航と鈴凛の会話は,ボケとツッコミのかけあいでこんなことに・・・
あと,鞠絵ちゃんはこの後にたっぷり出てきます(予定です・・・)
鞠絵が案内してくれたあずまやは,療養所の中庭にある池のほとりに立っていた。
水面をさわやかな風が通り過ぎていく。
航達は,あずまやの中に腰を落ち着けた。
「よくここで,ミカエルと一緒に本を読むんです」
ミカエルの頭をなでながら鞠絵が言った。
「へぇーっ,いいところだねー」
「風が気持ちいいですの」
二人が感心する。
「全くだ。よく昼寝が・・・いや読書が進みそうだ」
「もう,兄上様ったら」
鞠絵が苦笑した。
「ごめん,つい本音がでた」
「じゃあさ,みんなでお昼寝を・・・」
「さて始めるぞ」
鈴凛の提案は,あっさりと却下された。
「ちぇっ・・・」
「何かいったか?」
「いえなんにも」
「今日中にまとめないと,明日から遊べないぞ」
「わかってま〜す」
「がんばるですの」
「じゃあまず最初に,登場人物の確認だな」
航が鞠絵の方を見る。
「鞠絵,まとめた成果を見せてもらおうかな」
「はい。では始めますね」
鞠絵が,持参したノートをぱらりとめくった。
<第一部:桃太郎の鬼退治 検証編>
「桃太郎に登場するのは,
1.桃太郎
2.おじいさん
3.おばあさん
4.犬
5.猿
6.雉
7.鬼
です。このうち,鬼は複数いるようですが,正確な人数は分かりませんね」
「意外と少ないんだね」
「もともとお伽話というのは,口頭で伝えられるものだからな」
航が説明する。
「あんまり出てくる人が多いと,訳が分からなってしまうだろ。ましてや聞くのは子どもが多いだろうし」
「納得ですの」
白雪がうんうんとうなずく。
「じゃあ今度はそれぞれについてもう少し詳しく見ていこうか。鞠絵,続けてくれる?」
(その1 桃太郎ってなんなのさ)
「はい,では最初に桃太郎から。そもそも,桃太郎とは何者か?ということですね」
「え,桃太郎って桃太郎でしょ。電車の中でもアニキにいったけどさ,他に何かあるの?」
鈴凛が不思議そうにいった。
「ま,フツーはそう答えるだろうな。じゃあ,桃太郎の登場シーンをもう一度」
「川の上流から,どんぶらこ〜どんぶらこ〜と流れてきた桃から生まれたんでしょ」
「常識的に考えてあり得ないだろ。赤ちゃんが入るだけの桃って,どれくらい大きいんだ?ついでにいうと,本当に入っていたらあっという間に窒息死だ」
航が愉快そうに指摘する。
「いや・・・そりゃそうだけどさ」
鈴凛が困った顔をして考え込む。
「だから,何かのたとえ話なんじゃないのかな?うーん・・・」
代わりに白雪が尋ねる。
「じゃあにいさまは,どう考えてるんですの?」
「そうだな・・・」
航は少し考えてからいった。
「桃というのは,昔から霊力があって魔を退ける聖なる果物とされていたんだ。日本書紀にもあるようにね。だから,桃から生まれたからその力で鬼退治ができた・・・という理由付けのためと考えられるんだけど・・・」
「ど・・・で,アニキその続きは?」
「桃太郎で桃が出てくるのがここまでなんだよな。後はまるで出てこない」
「え〜と,姫も思い出しますの・・・う〜んと,確かにそうですの」
「そういやそうだね。なんか『桃太郎』って名前を付けるためだけに桃が登場したみたいだね〜」
「・・・」
「ん?アニキ,どうかした?」
航が瞬きもせず鈴凛をじっと見ている。
「ちょ,ちょっとアニキ,そんなに見つめられたら恥ずかしいよ・・・」
鈴凛が顔を赤くしてうつむく。
航が小さくため息をついた。
「お前の直感『だけ』はたいしたものなんだがなあ・・・」
「なんかものすごーく失礼なことをいわれている気がするけど,どういうこと?」
「桃太郎の始まり方には,もう一つあるんだよ。鞠絵,どう?」
「はい,もう一つあります。江戸時代では,こちらの方も有名だったようですね」
「どんなのですの?」
「川の上流から桃が流れてくるのは同じなんですが,その中に桃太郎はいなくて,桃は桃のままなんです」
「ほうほう,それで?」
「おばあさんが桃を家に持ち帰って,おじいさんと一緒にそれを食べると,翌日に二人とも若返ってしまったんです。それで・・・その・・・」
鞠絵が顔を赤らめる。
「その後,ちょっと呼び方がおかしいけど,若返ったおじいさんとおばあさんとの間に子どもができて,桃太郎と名付けられた,というわけだな」
航がフォローする。
「鞠絵,ごめん。恥ずかしいことをいわせちゃったね」
「いえ・・・本にもそう書いてありましたので・・・」
「わ〜,アニキセクハラ〜」
「セクハラですの〜」
二人がはやし立てる。
「わざとじゃないって。途中で気づいたんだよ」
「ホント〜?」
「あのな・・・でもこっちの方がまだ納得できるストーリーだろ。中国だと桃は不老不死になれる果物だしな」
「うん。桃から生まれたっていうよりは,分かりやすいかも」
「でも,そんなお話は初めて聞いたですの」
「ああ,それはな・・・はい鞠絵チェンジ」
「今私達が知っている桃太郎は,巖谷小波という人が明治時代にまとめたものなんです。それまでは,全国各地にいろいろな桃太郎があったようですね」
「へ〜,そうなんだ〜。じゃあ,さっきのおじいさんとおばあさんが若返るって話は,その人が採用しなかったわけだね」
「そりゃそうだろ」
「なんで?」
「桃太郎は国語の教科書にも載ってたんだぞ。小学校低学年のちっちゃい子達に,桃でおじいさんとおばあさんが若返って子どもができました・・・ていう話はできないだろ?今ならともかく,昔みたいにそういう表現に厳しかった頃ならなおさらだな。生々しすぎるよ」
「たしかにそうですの・・・姫も,雛子ちゃんや亞里亞ちゃんに『赤ちゃんてどこから来るの?』ってきかれて困ったことがありますの・・・」
「あ〜,え〜と・・・」
自分でネタを振っておきながら,何と言っていいか困っている航を見かねて,鞠絵が助け船を出す。
「兄上様,桃についてですが・・・」
「あ,そうそう。桃太郎で不思議なのは,さっきもいったけど桃から生まれたという設定が後半全然出てこないことなんだ。鬼を退治するのに,桃の霊力を使ってもいいんじゃないかな?それでこそ『さすが桃から生まれた桃太郎!』のはずだけど」
「そうだよねえ・・・鬼にトドメをさすのが”必殺,ピーチスラッシュ!”とかさ」
「”ピーチボンバー!”はどうですの?」
「なんで英語なんだよ・・・それはともかくして,ここで一つ疑問がでてくる」
「どんな?」
「桃から生まれた桃太郎と,鬼ヶ島に鬼退治に行った桃太郎は別人じゃないかって」
「!」
鈴凛と白雪が目を丸くする。
「さっき鈴凛がいってたけど,桃の役割っていうのは,『桃太郎』の名前の由来をつけるためだけだとしたら,説明がつくんだよ」
「え,じゃあ鬼ヶ島に行った桃太郎はどうなるの?」
目を丸くしたままの鈴凛が尋ねる。
「そこでもう一度考えてみよう。鬼ヶ島に行くのは桃太郎じゃなきゃいけないかな?」
航がいった。
「うーん。鬼退治だよねえ・・・勇者だったら誰でもいいかも」
「でもにいさま,桃太郎が鬼ヶ島に行くのは必然ではないですの?」
「必然じゃないんだよ」
「え?」
「話の筋を思い出してごらん。ある日突然桃太郎が『鬼退治に行く!』って言い出すだろ」
「そうですの・・・でもそれは,鬼が悪いことをいっぱいしていたから・・・じゃないですの?」
「さあ,そうはどうかな・・・ま,鬼については後でもう一回考えるから。鞠絵,続きをいいかな?」
「はい。桃太郎の前半と後半は別の話ではないか,という説は以前からありますね」
「え,そうなの?」
「そうなんです。鬼ヶ島での鬼退治については,源為朝の伊豆大島での活躍などが原型じゃないかという説があります。また,前半なんですけど,桃太郎というお伽話が誕生した頃は,『子どもがほしかったおじいさんとおばあさんが,桃の力で桃太郎を授かりました。もしくは,桃から生まれた桃太郎を授かりました。めでたしめでたし』で完結していた可能性がある,という説もありますね」
「なるほどなるほど。それだとストーリーがシンプルだね」
「桃の種はお薬にもなりますのよ。そのまま食べてよし。ピーチパイにしてもよし。桃ってスゴイですの!」
「・・・ということでだ。桃太郎には,『桃から生まれただけの桃太郎』と『鬼ヶ島に行った自称桃太郎』の二人がいた可能性がある,ということかな」
話がそれそうになったので,航が無理矢理まとめた。
「でもさ,いつどこでそんな話がくっついたのかな?」
「不思議ですの・・・」
「兄上様,いかがですか?」
鞠絵が面白そうな表情を浮かべて航に尋ねた。どう答えるか興味があるらしい。
「自分なりの推測はしているんだけどね,まだいうのは早いかな。もうちょっと検討してからにするよ」
航がそう返すと,鞠絵は少し残念そうにいった。
「そうですか・・・じゃあ,後のお楽しみですね」
「そんなこといって,実は分かってないんじゃないの〜?」
鈴凛がニヤニヤしている。
「アニキ,鞠絵ちゃんの前でカッコつけようなんて思ってない?」
「思ってない!こういう時だけ元気よくツッコむな!」
「にいさま,ムキになっちゃダメですの」
「お前らなあ・・・」
鞠絵はクスクスと笑っている。
「・・・最初の桃太郎だけでやけに時間がかかったな。次にいこうか」
航は,兄の威厳をこめて言ったつもりだった。
しかし三人の妹達は,気にもしていないようだ。
笑いながら返事をする。
「ほ〜い」
「はいですの」
「はい,兄上様」
水面をさわやかな風が通り過ぎていく。
航達は,あずまやの中に腰を落ち着けた。
「よくここで,ミカエルと一緒に本を読むんです」
ミカエルの頭をなでながら鞠絵が言った。
「へぇーっ,いいところだねー」
「風が気持ちいいですの」
二人が感心する。
「全くだ。よく昼寝が・・・いや読書が進みそうだ」
「もう,兄上様ったら」
鞠絵が苦笑した。
「ごめん,つい本音がでた」
「じゃあさ,みんなでお昼寝を・・・」
「さて始めるぞ」
鈴凛の提案は,あっさりと却下された。
「ちぇっ・・・」
「何かいったか?」
「いえなんにも」
「今日中にまとめないと,明日から遊べないぞ」
「わかってま〜す」
「がんばるですの」
「じゃあまず最初に,登場人物の確認だな」
航が鞠絵の方を見る。
「鞠絵,まとめた成果を見せてもらおうかな」
「はい。では始めますね」
鞠絵が,持参したノートをぱらりとめくった。
<第一部:桃太郎の鬼退治 検証編>
「桃太郎に登場するのは,
1.桃太郎
2.おじいさん
3.おばあさん
4.犬
5.猿
6.雉
7.鬼
です。このうち,鬼は複数いるようですが,正確な人数は分かりませんね」
「意外と少ないんだね」
「もともとお伽話というのは,口頭で伝えられるものだからな」
航が説明する。
「あんまり出てくる人が多いと,訳が分からなってしまうだろ。ましてや聞くのは子どもが多いだろうし」
「納得ですの」
白雪がうんうんとうなずく。
「じゃあ今度はそれぞれについてもう少し詳しく見ていこうか。鞠絵,続けてくれる?」
(その1 桃太郎ってなんなのさ)
「はい,では最初に桃太郎から。そもそも,桃太郎とは何者か?ということですね」
「え,桃太郎って桃太郎でしょ。電車の中でもアニキにいったけどさ,他に何かあるの?」
鈴凛が不思議そうにいった。
「ま,フツーはそう答えるだろうな。じゃあ,桃太郎の登場シーンをもう一度」
「川の上流から,どんぶらこ〜どんぶらこ〜と流れてきた桃から生まれたんでしょ」
「常識的に考えてあり得ないだろ。赤ちゃんが入るだけの桃って,どれくらい大きいんだ?ついでにいうと,本当に入っていたらあっという間に窒息死だ」
航が愉快そうに指摘する。
「いや・・・そりゃそうだけどさ」
鈴凛が困った顔をして考え込む。
「だから,何かのたとえ話なんじゃないのかな?うーん・・・」
代わりに白雪が尋ねる。
「じゃあにいさまは,どう考えてるんですの?」
「そうだな・・・」
航は少し考えてからいった。
「桃というのは,昔から霊力があって魔を退ける聖なる果物とされていたんだ。日本書紀にもあるようにね。だから,桃から生まれたからその力で鬼退治ができた・・・という理由付けのためと考えられるんだけど・・・」
「ど・・・で,アニキその続きは?」
「桃太郎で桃が出てくるのがここまでなんだよな。後はまるで出てこない」
「え〜と,姫も思い出しますの・・・う〜んと,確かにそうですの」
「そういやそうだね。なんか『桃太郎』って名前を付けるためだけに桃が登場したみたいだね〜」
「・・・」
「ん?アニキ,どうかした?」
航が瞬きもせず鈴凛をじっと見ている。
「ちょ,ちょっとアニキ,そんなに見つめられたら恥ずかしいよ・・・」
鈴凛が顔を赤くしてうつむく。
航が小さくため息をついた。
「お前の直感『だけ』はたいしたものなんだがなあ・・・」
「なんかものすごーく失礼なことをいわれている気がするけど,どういうこと?」
「桃太郎の始まり方には,もう一つあるんだよ。鞠絵,どう?」
「はい,もう一つあります。江戸時代では,こちらの方も有名だったようですね」
「どんなのですの?」
「川の上流から桃が流れてくるのは同じなんですが,その中に桃太郎はいなくて,桃は桃のままなんです」
「ほうほう,それで?」
「おばあさんが桃を家に持ち帰って,おじいさんと一緒にそれを食べると,翌日に二人とも若返ってしまったんです。それで・・・その・・・」
鞠絵が顔を赤らめる。
「その後,ちょっと呼び方がおかしいけど,若返ったおじいさんとおばあさんとの間に子どもができて,桃太郎と名付けられた,というわけだな」
航がフォローする。
「鞠絵,ごめん。恥ずかしいことをいわせちゃったね」
「いえ・・・本にもそう書いてありましたので・・・」
「わ〜,アニキセクハラ〜」
「セクハラですの〜」
二人がはやし立てる。
「わざとじゃないって。途中で気づいたんだよ」
「ホント〜?」
「あのな・・・でもこっちの方がまだ納得できるストーリーだろ。中国だと桃は不老不死になれる果物だしな」
「うん。桃から生まれたっていうよりは,分かりやすいかも」
「でも,そんなお話は初めて聞いたですの」
「ああ,それはな・・・はい鞠絵チェンジ」
「今私達が知っている桃太郎は,巖谷小波という人が明治時代にまとめたものなんです。それまでは,全国各地にいろいろな桃太郎があったようですね」
「へ〜,そうなんだ〜。じゃあ,さっきのおじいさんとおばあさんが若返るって話は,その人が採用しなかったわけだね」
「そりゃそうだろ」
「なんで?」
「桃太郎は国語の教科書にも載ってたんだぞ。小学校低学年のちっちゃい子達に,桃でおじいさんとおばあさんが若返って子どもができました・・・ていう話はできないだろ?今ならともかく,昔みたいにそういう表現に厳しかった頃ならなおさらだな。生々しすぎるよ」
「たしかにそうですの・・・姫も,雛子ちゃんや亞里亞ちゃんに『赤ちゃんてどこから来るの?』ってきかれて困ったことがありますの・・・」
「あ〜,え〜と・・・」
自分でネタを振っておきながら,何と言っていいか困っている航を見かねて,鞠絵が助け船を出す。
「兄上様,桃についてですが・・・」
「あ,そうそう。桃太郎で不思議なのは,さっきもいったけど桃から生まれたという設定が後半全然出てこないことなんだ。鬼を退治するのに,桃の霊力を使ってもいいんじゃないかな?それでこそ『さすが桃から生まれた桃太郎!』のはずだけど」
「そうだよねえ・・・鬼にトドメをさすのが”必殺,ピーチスラッシュ!”とかさ」
「”ピーチボンバー!”はどうですの?」
「なんで英語なんだよ・・・それはともかくして,ここで一つ疑問がでてくる」
「どんな?」
「桃から生まれた桃太郎と,鬼ヶ島に鬼退治に行った桃太郎は別人じゃないかって」
「!」
鈴凛と白雪が目を丸くする。
「さっき鈴凛がいってたけど,桃の役割っていうのは,『桃太郎』の名前の由来をつけるためだけだとしたら,説明がつくんだよ」
「え,じゃあ鬼ヶ島に行った桃太郎はどうなるの?」
目を丸くしたままの鈴凛が尋ねる。
「そこでもう一度考えてみよう。鬼ヶ島に行くのは桃太郎じゃなきゃいけないかな?」
航がいった。
「うーん。鬼退治だよねえ・・・勇者だったら誰でもいいかも」
「でもにいさま,桃太郎が鬼ヶ島に行くのは必然ではないですの?」
「必然じゃないんだよ」
「え?」
「話の筋を思い出してごらん。ある日突然桃太郎が『鬼退治に行く!』って言い出すだろ」
「そうですの・・・でもそれは,鬼が悪いことをいっぱいしていたから・・・じゃないですの?」
「さあ,そうはどうかな・・・ま,鬼については後でもう一回考えるから。鞠絵,続きをいいかな?」
「はい。桃太郎の前半と後半は別の話ではないか,という説は以前からありますね」
「え,そうなの?」
「そうなんです。鬼ヶ島での鬼退治については,源為朝の伊豆大島での活躍などが原型じゃないかという説があります。また,前半なんですけど,桃太郎というお伽話が誕生した頃は,『子どもがほしかったおじいさんとおばあさんが,桃の力で桃太郎を授かりました。もしくは,桃から生まれた桃太郎を授かりました。めでたしめでたし』で完結していた可能性がある,という説もありますね」
「なるほどなるほど。それだとストーリーがシンプルだね」
「桃の種はお薬にもなりますのよ。そのまま食べてよし。ピーチパイにしてもよし。桃ってスゴイですの!」
「・・・ということでだ。桃太郎には,『桃から生まれただけの桃太郎』と『鬼ヶ島に行った自称桃太郎』の二人がいた可能性がある,ということかな」
話がそれそうになったので,航が無理矢理まとめた。
「でもさ,いつどこでそんな話がくっついたのかな?」
「不思議ですの・・・」
「兄上様,いかがですか?」
鞠絵が面白そうな表情を浮かべて航に尋ねた。どう答えるか興味があるらしい。
「自分なりの推測はしているんだけどね,まだいうのは早いかな。もうちょっと検討してからにするよ」
航がそう返すと,鞠絵は少し残念そうにいった。
「そうですか・・・じゃあ,後のお楽しみですね」
「そんなこといって,実は分かってないんじゃないの〜?」
鈴凛がニヤニヤしている。
「アニキ,鞠絵ちゃんの前でカッコつけようなんて思ってない?」
「思ってない!こういう時だけ元気よくツッコむな!」
「にいさま,ムキになっちゃダメですの」
「お前らなあ・・・」
鞠絵はクスクスと笑っている。
「・・・最初の桃太郎だけでやけに時間がかかったな。次にいこうか」
航は,兄の威厳をこめて言ったつもりだった。
しかし三人の妹達は,気にもしていないようだ。
笑いながら返事をする。
「ほ〜い」
「はいですの」
「はい,兄上様」
(つづく)
※※※
またも一日空いてしまいました。
ネタが尽きた・・・というわけではないんです。むしろ逆。
いざ書き始めるとキャラが暴走して,なかなか本論に入ってくれないんですよ。
「もっとしゃべらせろー」とガンガン自己主張してくるんです(特に鈴凛(笑))
第6回で,やっと「桃太郎」にたどり着きましたからね〜。
この先はどうなることやら。
ちなみに,今日ももちろん仕事中ですよ。
文章を練ってる合間に仕事をやってます(笑)
またも一日空いてしまいました。
ネタが尽きた・・・というわけではないんです。むしろ逆。
いざ書き始めるとキャラが暴走して,なかなか本論に入ってくれないんですよ。
「もっとしゃべらせろー」とガンガン自己主張してくるんです(特に鈴凛(笑))
第6回で,やっと「桃太郎」にたどり着きましたからね〜。
この先はどうなることやら。
ちなみに,今日ももちろん仕事中ですよ。
文章を練ってる合間に仕事をやってます(笑)
「そんなに大きな声をだすなって。桃太郎を知らんのか?」
「知らないわけないでしょ!幼稚園の頃先生に読んでもらったんだから」
「昔々あるところに,おじいさんとおばあさんが住んでいました・・・で始まるですの」
「そのとおり。ちなみにだ」
航は一度言葉を切る。
「あれ,一部実話だから」
「え,マジで!」
「ホントですの?」
「うん。歴史的事実を反映している部分もある」
二人とも半信半疑の様子だ。
「それは知りませんでしたの・・・」
「私も・・・じゃあ,鬼ヶ島で宝の山がザックザクというのもホントだったんだ・・・」
「食いつくのはそっちか・・・まあ,『宝』は金銀小判とは限らんが」
「え?」
「詳しくは,後で鞠絵と一緒の時に話すとして,それまでは自分の頭の中で,気になることをピックアップしておくんだな」
「気になることって・・・何?」
「にいさま,桃太郎は桃太郎でないですの?」
「それを自分で考えるんだよ」
「う〜ん」
二人して腕を組んで考え込む。
「難しいなあ・・・」
「難しいですの・・・ところでにいさま,コーヒーいかがですの?」
「お,ありがとう。いただこうかな。で,何が難しいんだ?」
コーヒーを片手に航が尋ねた。
「んーと,気になることなんて無いですの」
「白雪ちゃん,私にもコーヒーちょーだい」
と,鈴凛も手を伸ばす。
「あ,そうそう,アニキ,私も同じ意見。さっき白雪ちゃんもいってたけど,桃太郎は桃太郎でしょ?」
「ほほう・・・つまり疑問点は無い,ということかな?」
少し愉快そうに航がいう。
「そーゆーわけじゃないけどさ」
鈴凛が身振り手振りをまじえながら答える。
「桃太郎ってさ,桃から生まれた桃太郎が,犬猿雉を黍団子で従えて,鬼ヶ島の鬼をやっつけて,お宝をもらって帰る,って話でしょ?」
「うん。見事な要約だな」
「へへーっ,私ってスゴイ?で,ハッピーエンドでしょ。それでいいんじゃないの?」
「ですの」
「誰にとってのハッピーエンドかな?」
「?」
「アニキ,どういうこと?」
「それは着いてからのお楽しみということで」
航が小さくあくびをした。
「ところで,まだ時間はあるし,今朝は早かったから,お前達少し寝たらどうだ。そんなテンションじゃ,着いてからしんどいぞ」
「アニキこそどうぞお先に〜」
「お休みですの〜」
二人が小さく手を振る。
「ふーん?じゃあ寝るぞ・・・あ,そうだ,鈴凛。念のためいっとくが,寝顔を撮ったりするなよ」
「ちぇっ,バレたか」
「お前の考えてることなんか丸分かりだよ」
そういって航は目を閉じた。
「・・・アニキ,寝ちゃったかな?」
少ししてから,鈴凛が航の顔に自分の顔を近づける。
「ふふ,寝てる寝てる。カワイイね・が・お」
顔を離してから,鈴凛は自分の携帯電話を白雪に手渡した。
「じゃあ,白雪ちゃん。アニキの寝顔を撮ってくれる?」
「え,そんなことしたらにいさまに怒られますの・・・」
「大丈夫大丈夫。さっきアニキは『鈴凛,寝顔は撮るなよ』っていったけど,『白雪ちゃんは撮っちゃダメ』とはいってないも〜ん」
「でもへりくつみたいですの・・・」
と,まだ白雪は迷っているようだったが,
「撮ったデータはみんなに送るよ〜」
との鈴凛の悪魔の誘いに,
「撮るですの」
とあっけなく陥落し,シャッター音が航に聞こえないよう注意しながら,バシャバシャと撮影する。
「これでアニキをゆすれるね〜。じゃさっそくみんなに送ろうかな」
「姫の宝物にするですの」
・・・そんなことはつゆ知らず,航は眠りこけていた。
そうこうしているうちに,航達の乗った電車は,終点の高原駅に到着した。
ここから鞠絵のいる療養所まで,徒歩で約30分といったところだ。
航達が高原駅の改札を出ると,見覚えのある麦わら帽子を,目深にかぶった少女が立っていた。
傍らには,ゴールデンリトリバーがしっぽを振っている。
「え・・・と,鞠絵?」
航が声をかけた。少女が顔を上げてニコリと笑う。
「ようこそ,兄上様。お待ちしておりました」
「迎えに来てくれたの?体調は大丈夫?」
・・・との航の言葉は,途中で鈴凛と白雪の声でかき消された。
「あ〜〜〜〜っ,鞠絵ちゃんだ〜〜〜〜!元気だった〜〜〜〜?」
「ミカエルも久しぶりですの!」
鞠絵達に走り寄る二人に,航が突き飛ばされる。
「うわっ!」
思わずよろけて,尻もちをついてしまう。
「あっ,アニキ〜,ゴメンゴメン」
「にいさま,ごめんなさいですの」
「あのな・・・」
航が立ち上がろうとすると,すっと手がさしのべられる。
「兄上様,大丈夫ですか?」
鞠絵だった。
「ありがと」
鞠絵の手を握って立ち上がる。
「元気だった?」
航は手を握ったまま,鞠絵の顔をのぞき込む。
「は,はい。おかげさまで・・・」
鞠絵は赤面してうつむく。
「兄上様・・・そんな間近だと恥ずかしいです・・・」
「あ,ごめんごめん」
「あ〜,アニキ〜,いやらしいんだ〜」
「にいさま,えっちですの〜」
二人に冷やかされて,鞠絵はあわてて手を離す。
「兄上様,ごめんなさい」
航がやや恨めしげな口調でいった。
「・・・お前ら俺のことをどう思ってるんだ?」
「ステキなアニキ!でもちょっとスケベ,ふふっ」
鈴凛がにまっと笑う。
「で〜すの!」
白雪も笑う。
鞠絵も下を向いているが,肩を震わせている。笑いをこらえているのだろう。
「お前らなあ,鞠絵までもう・・・」
航は頭をかいた。
「さて,そろそろ療養所に行こうか。鞠絵,歩いて大丈夫?」
「はい」
「おーい,お前らも行くぞ」
ミカエルとじゃれていた二人にも声をかける。
「「はーい」」
道すがら,妹達は近況報告で盛り上がっていた。
「・・・でさあ,アニキったら鞠絵ちゃんのいる療養所にまで来て,勉強しようっていうんだよ〜。せっかく来たんだから,思いっきり羽を伸ばしたいよね〜」
「そうか。じゃあレポートは鈴凛一人でがんばってくれ」
「わ〜〜〜〜,ウソですウ・ソ。アニキ,手伝ってね!」
「でも,こんなに空気がいいところだと,新しいレシピを思いつきそうですのに・・・」
「・・・まあ,早く終わったら自由にしていいよ」
「やったー!」
「終わればだぞ」
「はいですの!」
鞠絵が航に尋ねた。
「あの,兄上様。今日はこれからどうされますか?」
「そうだなあ・・・まず部屋に荷物を置いて,昼ごはんを食べてから勉強開始ってところかな。そういえば鞠絵,予習はちゃんとやったかな?」
「はい,調べておきました」
「よくできました」
そういって航は鞠絵の頭を軽くなでた。
嬉しそうに鞠絵が微笑む。
「あ〜,鞠絵ちゃんいいな〜」
「お前らもちょっとは見習え」
「私も,『鈴凛はいつもかわいいよ』って,頭をナデナデしてくれたらやる気が出るのになあ〜」
「徹夜で勉強するならしてあげよう」
航が返す。
「ううう・・・遠慮しときます」
「姫もナデナデしてほしいですけど,徹夜は無理ですの・・・」
二人がしょげた。
「ま,遊びたかったら今日これから頑張るんだな。早く終わればそれだけ時間ができるんだから」
航は軽く笑いながらいうと,鞠絵の方に振り向いた。
「昼ごはんはテラスで食べようか?」
「さんせ〜!」
「賛成ですの!」
「お前ら,騒ぐなよ」
「そんなの分かってるって〜。鞠絵ちゃん,ミカエルも一緒に!」
「はい」
「ワン!」
「・・・大丈夫かな」
航の予想どおり,しゃべるか食べるか,ともかく口を動かしてばかりの鈴凛と白雪を相手に,昼食時は大騒ぎとなった。
なんとか食事を終えて,食後のコーヒーを飲みながら,航が鞠絵に尋ねた。
「さて,どこで勉強するかなあ。天気もいいし,外の方が気持ちがいいね。どこかない?」
「・・・そうですね。ちょっと歩いたところに,あずまやがありますよ」
「お,そりゃいい。そこにしようか」
「アニキ〜,ここのご飯おいしいね〜。でももう食べられないよ〜」
「姫もですの〜」
「お前ら食べ過ぎだ!もうちょっとしたら勉強を開始するぞ」
「食後の休憩は〜?」
「勉強の後!」
「ふえ〜い」
「3時のおやつには,紅茶をご用意しますね。みんなでがんばりましょう」
「はいですの!」
「はーい!」
「俺の時と返事が違うぞ・・・」
航がぼやく。鞠絵がクスリと笑って立ち上がる。
「あちらです。ご案内しますね」
※※※
すいません,一日空いてしまいました。
昨日は仕事がちょっと忙しくて,仕事中に文章のネタを考えることが難しかったんです〜。
↑上記の文章は人間としてどこかが間違っています。その点を指摘しなさい(5点)
それはさておき,買ってしまいました。
白閣下降臨!

何と見目麗しゅう・・・
え〜と,鞠絵ちゃんにはナイショにしといてください(笑)
「知らないわけないでしょ!幼稚園の頃先生に読んでもらったんだから」
「昔々あるところに,おじいさんとおばあさんが住んでいました・・・で始まるですの」
「そのとおり。ちなみにだ」
航は一度言葉を切る。
「あれ,一部実話だから」
「え,マジで!」
「ホントですの?」
「うん。歴史的事実を反映している部分もある」
二人とも半信半疑の様子だ。
「それは知りませんでしたの・・・」
「私も・・・じゃあ,鬼ヶ島で宝の山がザックザクというのもホントだったんだ・・・」
「食いつくのはそっちか・・・まあ,『宝』は金銀小判とは限らんが」
「え?」
「詳しくは,後で鞠絵と一緒の時に話すとして,それまでは自分の頭の中で,気になることをピックアップしておくんだな」
「気になることって・・・何?」
「にいさま,桃太郎は桃太郎でないですの?」
「それを自分で考えるんだよ」
「う〜ん」
二人して腕を組んで考え込む。
「難しいなあ・・・」
「難しいですの・・・ところでにいさま,コーヒーいかがですの?」
「お,ありがとう。いただこうかな。で,何が難しいんだ?」
コーヒーを片手に航が尋ねた。
「んーと,気になることなんて無いですの」
「白雪ちゃん,私にもコーヒーちょーだい」
と,鈴凛も手を伸ばす。
「あ,そうそう,アニキ,私も同じ意見。さっき白雪ちゃんもいってたけど,桃太郎は桃太郎でしょ?」
「ほほう・・・つまり疑問点は無い,ということかな?」
少し愉快そうに航がいう。
「そーゆーわけじゃないけどさ」
鈴凛が身振り手振りをまじえながら答える。
「桃太郎ってさ,桃から生まれた桃太郎が,犬猿雉を黍団子で従えて,鬼ヶ島の鬼をやっつけて,お宝をもらって帰る,って話でしょ?」
「うん。見事な要約だな」
「へへーっ,私ってスゴイ?で,ハッピーエンドでしょ。それでいいんじゃないの?」
「ですの」
「誰にとってのハッピーエンドかな?」
「?」
「アニキ,どういうこと?」
「それは着いてからのお楽しみということで」
航が小さくあくびをした。
「ところで,まだ時間はあるし,今朝は早かったから,お前達少し寝たらどうだ。そんなテンションじゃ,着いてからしんどいぞ」
「アニキこそどうぞお先に〜」
「お休みですの〜」
二人が小さく手を振る。
「ふーん?じゃあ寝るぞ・・・あ,そうだ,鈴凛。念のためいっとくが,寝顔を撮ったりするなよ」
「ちぇっ,バレたか」
「お前の考えてることなんか丸分かりだよ」
そういって航は目を閉じた。
「・・・アニキ,寝ちゃったかな?」
少ししてから,鈴凛が航の顔に自分の顔を近づける。
「ふふ,寝てる寝てる。カワイイね・が・お」
顔を離してから,鈴凛は自分の携帯電話を白雪に手渡した。
「じゃあ,白雪ちゃん。アニキの寝顔を撮ってくれる?」
「え,そんなことしたらにいさまに怒られますの・・・」
「大丈夫大丈夫。さっきアニキは『鈴凛,寝顔は撮るなよ』っていったけど,『白雪ちゃんは撮っちゃダメ』とはいってないも〜ん」
「でもへりくつみたいですの・・・」
と,まだ白雪は迷っているようだったが,
「撮ったデータはみんなに送るよ〜」
との鈴凛の悪魔の誘いに,
「撮るですの」
とあっけなく陥落し,シャッター音が航に聞こえないよう注意しながら,バシャバシャと撮影する。
「これでアニキをゆすれるね〜。じゃさっそくみんなに送ろうかな」
「姫の宝物にするですの」
・・・そんなことはつゆ知らず,航は眠りこけていた。
そうこうしているうちに,航達の乗った電車は,終点の高原駅に到着した。
ここから鞠絵のいる療養所まで,徒歩で約30分といったところだ。
航達が高原駅の改札を出ると,見覚えのある麦わら帽子を,目深にかぶった少女が立っていた。
傍らには,ゴールデンリトリバーがしっぽを振っている。
「え・・・と,鞠絵?」
航が声をかけた。少女が顔を上げてニコリと笑う。
「ようこそ,兄上様。お待ちしておりました」
「迎えに来てくれたの?体調は大丈夫?」
・・・との航の言葉は,途中で鈴凛と白雪の声でかき消された。
「あ〜〜〜〜っ,鞠絵ちゃんだ〜〜〜〜!元気だった〜〜〜〜?」
「ミカエルも久しぶりですの!」
鞠絵達に走り寄る二人に,航が突き飛ばされる。
「うわっ!」
思わずよろけて,尻もちをついてしまう。
「あっ,アニキ〜,ゴメンゴメン」
「にいさま,ごめんなさいですの」
「あのな・・・」
航が立ち上がろうとすると,すっと手がさしのべられる。
「兄上様,大丈夫ですか?」
鞠絵だった。
「ありがと」
鞠絵の手を握って立ち上がる。
「元気だった?」
航は手を握ったまま,鞠絵の顔をのぞき込む。
「は,はい。おかげさまで・・・」
鞠絵は赤面してうつむく。
「兄上様・・・そんな間近だと恥ずかしいです・・・」
「あ,ごめんごめん」
「あ〜,アニキ〜,いやらしいんだ〜」
「にいさま,えっちですの〜」
二人に冷やかされて,鞠絵はあわてて手を離す。
「兄上様,ごめんなさい」
航がやや恨めしげな口調でいった。
「・・・お前ら俺のことをどう思ってるんだ?」
「ステキなアニキ!でもちょっとスケベ,ふふっ」
鈴凛がにまっと笑う。
「で〜すの!」
白雪も笑う。
鞠絵も下を向いているが,肩を震わせている。笑いをこらえているのだろう。
「お前らなあ,鞠絵までもう・・・」
航は頭をかいた。
「さて,そろそろ療養所に行こうか。鞠絵,歩いて大丈夫?」
「はい」
「おーい,お前らも行くぞ」
ミカエルとじゃれていた二人にも声をかける。
「「はーい」」
道すがら,妹達は近況報告で盛り上がっていた。
「・・・でさあ,アニキったら鞠絵ちゃんのいる療養所にまで来て,勉強しようっていうんだよ〜。せっかく来たんだから,思いっきり羽を伸ばしたいよね〜」
「そうか。じゃあレポートは鈴凛一人でがんばってくれ」
「わ〜〜〜〜,ウソですウ・ソ。アニキ,手伝ってね!」
「でも,こんなに空気がいいところだと,新しいレシピを思いつきそうですのに・・・」
「・・・まあ,早く終わったら自由にしていいよ」
「やったー!」
「終わればだぞ」
「はいですの!」
鞠絵が航に尋ねた。
「あの,兄上様。今日はこれからどうされますか?」
「そうだなあ・・・まず部屋に荷物を置いて,昼ごはんを食べてから勉強開始ってところかな。そういえば鞠絵,予習はちゃんとやったかな?」
「はい,調べておきました」
「よくできました」
そういって航は鞠絵の頭を軽くなでた。
嬉しそうに鞠絵が微笑む。
「あ〜,鞠絵ちゃんいいな〜」
「お前らもちょっとは見習え」
「私も,『鈴凛はいつもかわいいよ』って,頭をナデナデしてくれたらやる気が出るのになあ〜」
「徹夜で勉強するならしてあげよう」
航が返す。
「ううう・・・遠慮しときます」
「姫もナデナデしてほしいですけど,徹夜は無理ですの・・・」
二人がしょげた。
「ま,遊びたかったら今日これから頑張るんだな。早く終わればそれだけ時間ができるんだから」
航は軽く笑いながらいうと,鞠絵の方に振り向いた。
「昼ごはんはテラスで食べようか?」
「さんせ〜!」
「賛成ですの!」
「お前ら,騒ぐなよ」
「そんなの分かってるって〜。鞠絵ちゃん,ミカエルも一緒に!」
「はい」
「ワン!」
「・・・大丈夫かな」
航の予想どおり,しゃべるか食べるか,ともかく口を動かしてばかりの鈴凛と白雪を相手に,昼食時は大騒ぎとなった。
なんとか食事を終えて,食後のコーヒーを飲みながら,航が鞠絵に尋ねた。
「さて,どこで勉強するかなあ。天気もいいし,外の方が気持ちがいいね。どこかない?」
「・・・そうですね。ちょっと歩いたところに,あずまやがありますよ」
「お,そりゃいい。そこにしようか」
「アニキ〜,ここのご飯おいしいね〜。でももう食べられないよ〜」
「姫もですの〜」
「お前ら食べ過ぎだ!もうちょっとしたら勉強を開始するぞ」
「食後の休憩は〜?」
「勉強の後!」
「ふえ〜い」
「3時のおやつには,紅茶をご用意しますね。みんなでがんばりましょう」
「はいですの!」
「はーい!」
「俺の時と返事が違うぞ・・・」
航がぼやく。鞠絵がクスリと笑って立ち上がる。
「あちらです。ご案内しますね」
(つづく)
※※※
すいません,一日空いてしまいました。
昨日は仕事がちょっと忙しくて,仕事中に文章のネタを考えることが難しかったんです〜。
↑上記の文章は人間としてどこかが間違っています。その点を指摘しなさい(5点)
それはさておき,買ってしまいました。
白閣下降臨!

何と見目麗しゅう・・・
え〜と,鞠絵ちゃんにはナイショにしといてください(笑)
翌日,早朝の翼多駅。
休日の朝ともあって通勤・通学客の姿はまばらだが,観光地や帰省先に向かう多くの家族連れが,大きな荷物を持って電車を待っている。
そこに,航が本の詰まったボストンバックを抱えて到着した。
「ふう,さすがに重いな・・・さて,二人はもう来てるかな・・・?」
改札口の近くから,元気な声がした。
「アニキ,おっはよ〜!」
鈴凛だった。
「にいさま,おはようございますですの!」
白雪も手を振っている。
「お,二人とも早いな。おはよう。じゃあ,さっさと電車に乗るか」
「「はーい!」」
3人は高原行きの電車に乗り込んだ。
ボックス席が空いていたので,鈴凛と白雪を窓側に座らせる。
「鞠絵ちゃんに会うのも久しぶりだよね〜」
「はいですの。ミカエルにも,ちゃ〜んとお菓子を用意してるんですのよ」
「お,さすがだね〜」
・・・妹達の声をBGMに,航は昨夜の会話を思い出していた。
「もしもし,鞠絵?夜遅くにごめん。まだ起きてた?」
「はい,兄上様。こんばんは。まだ起きてますよ。ちょっとご本を読んでいましたので・・・どうかされましたか?」
「いや・・・用というほどのものじゃないけど。その・・・今朝はごめん。せっかくのゴールデンウィークが騒がしくなっちゃうな・・・」
携帯の向こうから,鞠絵がクスリと笑う声が聞こえた。
「いいんですよ。お二人からは,いつも元気をもらってますので・・・兄上様こそ,引率お疲れさまです」
「まったくだ。そっちに着くまでに疲れそうだよ」
「ふふっ,お待ちしていますね」
「ところでさ」
「はい」
「鈴凛からの電話って,いつくらいにあったの?まさか事前に話が着いているとは思わなかったからさ」
「2〜3日前ですよ。ゴールデンウィークに白雪ちゃんと一緒に行っていいかって。どうしても兄上様と一緒にいたいって,お願いされました。それで・・・」
「その時,学校でのレポートのこともいってた?」
「はい。私にも教えてもらいたい,っていってましたよ」
「あいつめ・・・」
「他の皆さんが今海外ですから,淋しいのかもしれませんね」
「そんなことをいったら鞠絵なんか・・・」
航の声が暗くなる。
「いいえ,兄上様」
鞠絵が慰めるようにいった。
「私には,兄上様がいらっしゃいます。なかなかお会いすることができませんが,お声とメールだけで十分ですよ」
「そういってもらえると嬉しいけどさ・・・」
航が言葉を続ける。
「いつでも会える鈴凛達と,すぐには会えない鞠絵とじゃあ,やっぱり違うよ・・・」
「・・・兄上様,お心遣いありがとうございます。もう,それだけで私は・・・」
会話が暗くなったことを気にしたのだろう,鞠絵が努めて明るい声でいった。
「じゃあ,一つだけ願いがあるのですが・・・」
「ん,いいよ。何だい?」
「その・・・『鞠絵,おやすみ』っていってもらえませんか?」
「いいけど・・・いつもいってるよ?」
「いえ・・・そうじゃなくて・・・その・・・妹じゃなくて,彼女のように・・・」
「『彼女』なんつーもんは,生まれてこの方いた試しがないんだが・・・」
航が苦笑する。
「え・・・,あ,兄上様,ご,ご,ごめんない。わたくし,変なことをいってしまって・・・」
「大好きな鞠絵,おやすみ」
「あ・・・」
「これでいいかな,鞠絵・・・鞠絵?」
「・・・大好きな兄上様,ありがとうございます。おやすみなさい」
「うん,おやすみ。また明日ね」
「はい・・・」
電話が切れた。
「はて・・・あのいい方でよかったのかな?」
航が首をかしげる。
「『彼女』ねえ・・・。彼女なんてつくったら,鞠絵もそうだけど,咲耶に何ていわれることやら」
苦笑すると,航は部屋の電気を消した。
「でもさあ,晴れてよかったよね〜」
「ホントですの」
「白雪ちゃん,そのバスケットってさあ,ひょっとして期待しちゃっていいのかなあ?」
「もちろんですの。姫特製のスペシャルおにぎりですのよ。にいさまも召し上がれ!」
妹達のはしゃぐ声で,航は現実に引き戻された。
「うん?あ,ああ。ありがとう,白雪。じゃあいただこうかな」
3人で,白雪がつくってくれたおにぎりにぱくつく。
「・・・アニキ,そういえばさあ,鞠絵ちゃんの着メロって,胃腸薬のCMの曲だっけ?」
「あのな・・・ドビュッシーの『亜麻色の髪の乙女』だよ。音楽の授業で聞いたことあるだろ」
「あるようなないような・・・アハハハハ。私ってさあ,音楽の時間って睡眠時間なんだよね〜。でもそれって鞠絵ちゃんをイメージしてるの?」
「ま,そういうこと」
「ちなみに私の着メロは?」
「ベートーベンの『運命』」
「ジャジャジャジャーン・・・それってどーゆー意味!ひどくない?」
「お前への資金援助が,ある意味『運命』だからな」
航が笑う。
「うう・・・なんか納得いかないなあ・・・」
鈴凛はやや不服そうだ。
「姫の着メロは何ですの?」
白雪のリボンが少し揺れる。
「モーツァルトの『トルコ行進曲』だよ。白雪っぽくていいと思って」
「いやーん,にいさまがそこまで思ってくれるなんて。姫,感激ですの!」
顔を真っ赤にしてうつむく。
「いやいや。よく似合ってるよ」
「あのさー,なーんか私だけ差別されている気がするんだけどなー」
「その分資金援助してるだろ。何なら援助をやめようか?」
からかうように航がいう。
「参りました」
鈴凛が頭を下げる。
「分かればよろしい・・・ところでお前達」
航が改まって二人にいう。
「鞠絵の療養所まで行くのはいいけど,向こうで何のレポートをまとめる気なんだ?」
「へ?」
「え?」
二人ともキョトンとした顔をする。
「へ・・・って,レポートのテーマを考えてないのか?」
鈴凛が頭をかく。
「いや〜,そこんところもアニキにお願いしようかな〜って思ってたんだけどさ」
「姫もですの・・・」
「・・・」
航がジト目で二人を見る。
「え・・・と,アニキ,ひょっとして怒ってる?」
「あきれているんだよ!」
「ごめんなさいですの・・・」
「でもでもでも,やさしいやさし〜いアニキのことだから,きっと考えてくれる・・・よね?」
苦虫を噛みつぶした口調で航がいう。
「今さら電車を降りろともいえんだろうが・・・鞠絵も向こうで待ってるし・・・ったく。今回だけだぞ」
「やったーっ!アニキ,愛してるよ!」
「姫もにいさまを愛してるですの!」
二人が航に抱きつく。
「わわっ,二人ともやめろ〜!電車の中でこれ以上騒ぐな抱きつくな〜!」
航は,乗客の視線が背中に突き刺さりまくっているのを感じながら,無理矢理二人を引きはがした。
「え〜,もうちょっとぐらいいでしょ〜」
「ですの〜」
「人前ではやめてくれ」
「じゃあ,人前じゃなかったらいいの?」
「うう・・・,ま,それはさておき,話を元に戻すとだな」
航が強引に話題を変えた。
「古典と日本史の教師を同時に満足させるテーマということだよな・・・」
「うん・・・」
鈴凛がしかめっ面をする。
「やっぱりにいさまでも難しいですの?」
白雪が心配そうに航を見た。
航は指をあごにあてて,少しの間考える。
「実は,あてが無いこともない」
「え,ホント!」
「ホントですの!」
「というか,そもそも『それ』を検討するために,鞠絵のところに行くつもりだったんだよ」
「さすがにいさまですの!」
「も〜,もったいぶらずに教えてよ〜,なになに?」
航は,小さく微笑みながら二人にいった。
「・・・『桃太郎』っていうのはどうかな?」
「「えっ,『ももたろう〜』!?」」
二人の声が,綺麗にシンクロした。電車の中に響き渡る。
<コメントレスです>
>ゆたんぽさん
12妹の一人称ありがとうございます!
実は鞠絵の一人称ですが,前回も結構悩みました。
「わたくし」とひらがなで書くとセリフがちょっと堅苦しいかなあ・・・と思いまして,わざと「私」と漢字にしています。脳内で「わたくし」とルビを振ってください(笑)
鈴凛の場合は,逆に「アタシ」とした方がイメージにあうと思うのですが,「アニキ」・「アタシ」とカタカナが続くとこれまた読んでてどうかなあ・・・と思いまして,「私」とそのままにしています。
春歌は「ワタクシ」でぴったりなんですけどね〜(笑)
休日の朝ともあって通勤・通学客の姿はまばらだが,観光地や帰省先に向かう多くの家族連れが,大きな荷物を持って電車を待っている。
そこに,航が本の詰まったボストンバックを抱えて到着した。
「ふう,さすがに重いな・・・さて,二人はもう来てるかな・・・?」
改札口の近くから,元気な声がした。
「アニキ,おっはよ〜!」
鈴凛だった。
「にいさま,おはようございますですの!」
白雪も手を振っている。
「お,二人とも早いな。おはよう。じゃあ,さっさと電車に乗るか」
「「はーい!」」
3人は高原行きの電車に乗り込んだ。
ボックス席が空いていたので,鈴凛と白雪を窓側に座らせる。
「鞠絵ちゃんに会うのも久しぶりだよね〜」
「はいですの。ミカエルにも,ちゃ〜んとお菓子を用意してるんですのよ」
「お,さすがだね〜」
・・・妹達の声をBGMに,航は昨夜の会話を思い出していた。
「もしもし,鞠絵?夜遅くにごめん。まだ起きてた?」
「はい,兄上様。こんばんは。まだ起きてますよ。ちょっとご本を読んでいましたので・・・どうかされましたか?」
「いや・・・用というほどのものじゃないけど。その・・・今朝はごめん。せっかくのゴールデンウィークが騒がしくなっちゃうな・・・」
携帯の向こうから,鞠絵がクスリと笑う声が聞こえた。
「いいんですよ。お二人からは,いつも元気をもらってますので・・・兄上様こそ,引率お疲れさまです」
「まったくだ。そっちに着くまでに疲れそうだよ」
「ふふっ,お待ちしていますね」
「ところでさ」
「はい」
「鈴凛からの電話って,いつくらいにあったの?まさか事前に話が着いているとは思わなかったからさ」
「2〜3日前ですよ。ゴールデンウィークに白雪ちゃんと一緒に行っていいかって。どうしても兄上様と一緒にいたいって,お願いされました。それで・・・」
「その時,学校でのレポートのこともいってた?」
「はい。私にも教えてもらいたい,っていってましたよ」
「あいつめ・・・」
「他の皆さんが今海外ですから,淋しいのかもしれませんね」
「そんなことをいったら鞠絵なんか・・・」
航の声が暗くなる。
「いいえ,兄上様」
鞠絵が慰めるようにいった。
「私には,兄上様がいらっしゃいます。なかなかお会いすることができませんが,お声とメールだけで十分ですよ」
「そういってもらえると嬉しいけどさ・・・」
航が言葉を続ける。
「いつでも会える鈴凛達と,すぐには会えない鞠絵とじゃあ,やっぱり違うよ・・・」
「・・・兄上様,お心遣いありがとうございます。もう,それだけで私は・・・」
会話が暗くなったことを気にしたのだろう,鞠絵が努めて明るい声でいった。
「じゃあ,一つだけ願いがあるのですが・・・」
「ん,いいよ。何だい?」
「その・・・『鞠絵,おやすみ』っていってもらえませんか?」
「いいけど・・・いつもいってるよ?」
「いえ・・・そうじゃなくて・・・その・・・妹じゃなくて,彼女のように・・・」
「『彼女』なんつーもんは,生まれてこの方いた試しがないんだが・・・」
航が苦笑する。
「え・・・,あ,兄上様,ご,ご,ごめんない。わたくし,変なことをいってしまって・・・」
「大好きな鞠絵,おやすみ」
「あ・・・」
「これでいいかな,鞠絵・・・鞠絵?」
「・・・大好きな兄上様,ありがとうございます。おやすみなさい」
「うん,おやすみ。また明日ね」
「はい・・・」
電話が切れた。
「はて・・・あのいい方でよかったのかな?」
航が首をかしげる。
「『彼女』ねえ・・・。彼女なんてつくったら,鞠絵もそうだけど,咲耶に何ていわれることやら」
苦笑すると,航は部屋の電気を消した。
「でもさあ,晴れてよかったよね〜」
「ホントですの」
「白雪ちゃん,そのバスケットってさあ,ひょっとして期待しちゃっていいのかなあ?」
「もちろんですの。姫特製のスペシャルおにぎりですのよ。にいさまも召し上がれ!」
妹達のはしゃぐ声で,航は現実に引き戻された。
「うん?あ,ああ。ありがとう,白雪。じゃあいただこうかな」
3人で,白雪がつくってくれたおにぎりにぱくつく。
「・・・アニキ,そういえばさあ,鞠絵ちゃんの着メロって,胃腸薬のCMの曲だっけ?」
「あのな・・・ドビュッシーの『亜麻色の髪の乙女』だよ。音楽の授業で聞いたことあるだろ」
「あるようなないような・・・アハハハハ。私ってさあ,音楽の時間って睡眠時間なんだよね〜。でもそれって鞠絵ちゃんをイメージしてるの?」
「ま,そういうこと」
「ちなみに私の着メロは?」
「ベートーベンの『運命』」
「ジャジャジャジャーン・・・それってどーゆー意味!ひどくない?」
「お前への資金援助が,ある意味『運命』だからな」
航が笑う。
「うう・・・なんか納得いかないなあ・・・」
鈴凛はやや不服そうだ。
「姫の着メロは何ですの?」
白雪のリボンが少し揺れる。
「モーツァルトの『トルコ行進曲』だよ。白雪っぽくていいと思って」
「いやーん,にいさまがそこまで思ってくれるなんて。姫,感激ですの!」
顔を真っ赤にしてうつむく。
「いやいや。よく似合ってるよ」
「あのさー,なーんか私だけ差別されている気がするんだけどなー」
「その分資金援助してるだろ。何なら援助をやめようか?」
からかうように航がいう。
「参りました」
鈴凛が頭を下げる。
「分かればよろしい・・・ところでお前達」
航が改まって二人にいう。
「鞠絵の療養所まで行くのはいいけど,向こうで何のレポートをまとめる気なんだ?」
「へ?」
「え?」
二人ともキョトンとした顔をする。
「へ・・・って,レポートのテーマを考えてないのか?」
鈴凛が頭をかく。
「いや〜,そこんところもアニキにお願いしようかな〜って思ってたんだけどさ」
「姫もですの・・・」
「・・・」
航がジト目で二人を見る。
「え・・・と,アニキ,ひょっとして怒ってる?」
「あきれているんだよ!」
「ごめんなさいですの・・・」
「でもでもでも,やさしいやさし〜いアニキのことだから,きっと考えてくれる・・・よね?」
苦虫を噛みつぶした口調で航がいう。
「今さら電車を降りろともいえんだろうが・・・鞠絵も向こうで待ってるし・・・ったく。今回だけだぞ」
「やったーっ!アニキ,愛してるよ!」
「姫もにいさまを愛してるですの!」
二人が航に抱きつく。
「わわっ,二人ともやめろ〜!電車の中でこれ以上騒ぐな抱きつくな〜!」
航は,乗客の視線が背中に突き刺さりまくっているのを感じながら,無理矢理二人を引きはがした。
「え〜,もうちょっとぐらいいでしょ〜」
「ですの〜」
「人前ではやめてくれ」
「じゃあ,人前じゃなかったらいいの?」
「うう・・・,ま,それはさておき,話を元に戻すとだな」
航が強引に話題を変えた。
「古典と日本史の教師を同時に満足させるテーマということだよな・・・」
「うん・・・」
鈴凛がしかめっ面をする。
「やっぱりにいさまでも難しいですの?」
白雪が心配そうに航を見た。
航は指をあごにあてて,少しの間考える。
「実は,あてが無いこともない」
「え,ホント!」
「ホントですの!」
「というか,そもそも『それ』を検討するために,鞠絵のところに行くつもりだったんだよ」
「さすがにいさまですの!」
「も〜,もったいぶらずに教えてよ〜,なになに?」
航は,小さく微笑みながら二人にいった。
「・・・『桃太郎』っていうのはどうかな?」
「「えっ,『ももたろう〜』!?」」
二人の声が,綺麗にシンクロした。電車の中に響き渡る。
(つづく)
※※※
・・・ということで,やっと桃太郎が出てきました(名前だけですけど)
次回からやっと,私の鞠絵ちゃんが本格的に登場します。
どういう話の展開になるのでしょうか?
マジで今考えてます。
仕事中も(笑)
※※※
・・・ということで,やっと桃太郎が出てきました(名前だけですけど)
次回からやっと,私の鞠絵ちゃんが本格的に登場します。
どういう話の展開になるのでしょうか?
マジで今考えてます。
仕事中も(笑)
<コメントレスです>
>ゆたんぽさん
12妹の一人称ありがとうございます!
実は鞠絵の一人称ですが,前回も結構悩みました。
「わたくし」とひらがなで書くとセリフがちょっと堅苦しいかなあ・・・と思いまして,わざと「私」と漢字にしています。脳内で「わたくし」とルビを振ってください(笑)
鈴凛の場合は,逆に「アタシ」とした方がイメージにあうと思うのですが,「アニキ」・「アタシ」とカタカナが続くとこれまた読んでてどうかなあ・・・と思いまして,「私」とそのままにしています。
春歌は「ワタクシ」でぴったりなんですけどね〜(笑)
「それをアニキに相談しようと思ってさ,へへ〜。ねえ,アニキだったらどっちが楽・・・じゃなかった,どっちがいいと思う?」
鈴凛が聞いてきた。
「あのなあ,ちょっとは自分で考えろ」
半分呆れた口調で航が言う。
「そこを何とか,お願い!アニキ様」
「・・・テストかな」
この回答は,二人にとって意外だったようだ。
「え,どうして?」
「どうしてですの?」
二人とも目を丸くしている。
「テストは問題の予想だけで済むけど,レポートは論理的に書かないとダメだからね」
「え〜,そうかなあ。出る問題なんてわかんないよ」
「んなことない。定期試験なんて,授業中に先生が繰り返し言ってた箇所を覚えりゃいいだけだ。簡単だろ」
「むう〜,姫には難しいですの・・・」
「他の科目だと出来てるだろ。苦手意識をなくすんだな」
「でもさあ・・・」
鈴凛が不服そうに言う。
「せっかくのゴールデンウィークが,ぜーんぶ試験勉強で消えちゃうんだよ〜。かなり悲しいよね〜」
「仕方ないだろ。自業自得だ」
「レポートだったら,最初の1日で仕上げちゃえばあとは遊べるよね〜」
「ですの〜」
「・・・さてはお前ら」
航があることに気がついた。
「俺にそのレポートを手伝わせる気だな!」
「ピンポーン!正解。でも手伝ってなんて,そんなのアニキに悪いからさ」
鈴凛がニッと笑う。
「代わりに書いてほしいな〜,なんて。アニキは古典と日本史が得意でしょ,へへ〜。うん,我ながらいいアイデア!」
「なお悪いわ!ダメだダ・メ・!」
「え〜,ダメなの〜?」
「何と言ってもダメなものはダメ。自分で書きなさい」
「・・・だってさ,白雪ちゃん。どーしよー」
「困りましたの・・・姫は,にいさまがぜーったい手伝ってくれるって信じてましたのに・・・」
白雪が困った顔をする。
「テストもレポートも,姫はゴールデンウィークを全部使っても出来る自信がないですの・・・」
「うーん,そんなことを言われてもなあ・・・」
航が頭をかく。
「鈴凛はともかくとして,白雪を手伝ってやりたいのは山々なんだけど,もうゴールデンウィークの予定は入れちゃったんだよなあ・・・」
「私はともかくってどーゆーことよ!でもアニキの予定って何だっけ?」
鈴凛が尋ねる。
「鞠絵のところまで泊まりで行ってくる。お前達が来るまでその準備をしていたんだよ」
「え〜,アニキだけ〜?そんなのず〜る〜い〜」
「にいさまぁ,姫はうらやましいですの」
「あのな。鞠絵とは前から約束してたし,お前らも知ってたろ」
航が反論した。
「そりゃそうだけどさぁ。カワイイ妹達が休み中にもかかわらず,え〜んえ〜んって涙を流しながら勉強するっていうのに,一人だけ遊びに行くなんて〜」
「だからそれは自業自得だろうが・・・まぁ,がんばりなさい。遠く療養所の空から応援してるから」
「え〜,手伝ってくれないのぉ〜」
「勉強というのは一人ですることに意義があるんだよ」
その時,テーブルの上に置いてあった航の携帯電話が鳴った。
着メロはドビュッシーの亜麻色の髪の乙女。療養所の鞠絵からだ。
航は慌てて携帯を手にとる。
「兄上様,鞠絵です。おはようございます」
「おはよう。どうしたの,こんなに朝早く。もしかして体調が悪くなった?」
「いいえ,私は大丈夫ですよ,兄上様。お心遣いありがとうございます。明日,兄上様がいらっしゃるのを楽しみにお待ちしております」
「そっか,よかった・・・僕も楽しみだよ。もうすぐ会えるから待っててね」
「はい,兄上様。ミカエルも首を長くしてお待ちしていますよ。ところで兄上様・・・」
鞠絵が尋ねる。
「その・・・そちらに鈴凛ちゃんと白雪ちゃんがいらっしゃいますか?」
「何で分かったの?いるけど・・・」
「明日からですが,よろしかったらお二人もご一緒にと思いまして」
「え,いいの?」
「はい。にぎやかな方が私も楽しいです」
「まあ,鞠絵がそういうなら・・・じゃあ二人にそう言っておくよ。また明日電話するね」
「はい,兄上様。また明日」
「・・・」
電話を切った後,航は少し考え込んでいた。
「アニキ,さっきの電話,鞠絵ちゃんから?」
「ああ」
「なんて?」
「明日から二人も一緒にどうぞ,って」
「え,ホント!やった〜,これでレポートができるね!」
「ホントですの?姫,うれしいですの!」
「・・・時に鈴凛」
「ン,何?アニキ」
「ちょっとこっちへ来い」
「な,何かな・・・?」
鈴凛が少し怯えた様子で近づく。
「お前,鞠絵に今回のことを話したろ」
「な,何のことでしょうか・・・?私にはさっぱり・・・」
航は鈴凛のこめかみを両方の拳でグリグリする。
「お・ま・え・なあ〜,タイミングがよすぎるんだよ。さてはあらかじめ鞠絵にOKをもらってたな〜」
「痛い痛いっ,ゴメッ,ゴメンてばー!」
「こういうことは準備がいいのに,何で試験ができないかなあ〜」
航のグリグリ攻撃は続く。
「人間向き不向きがあるんだってばさ〜,ごめんなさ〜い!」
ようやく鈴凛が解放された。
「いたたたた・・・」
「まったくもう・・・少しは反省しろ」
「アニキ・・・ごめん・・・」
鈴凛が少ししょげた顔で謝る。
「分かればよろしい。・・・まあ,鞠絵もそういってるから,明日はみんなで行こうか」
鈴凛の顔が,ぱぁっと明るくなる。
「え,ホントにいいの?」
「いいよ。朝一番の電車で行くから,荷物を持って駅に集合だな。白雪もいいかい?」
「・・・はいですの」
「ん,どうかした?」
航が尋ねる。
「姫,鈴凛ちゃんがちょっとうらやましいですの・・・」
「へ?」
「姫もにいさまにグリグリされたいですの!」
「えーと・・・」
航は指で頬をポリポリとかいていたが,おもむろに右手の中指で白雪の額を軽くはじいた。
「!」
白雪が額を手で押さえる。
「白雪は共犯ということでデコピンだな。これでいい?」
「はい,ごめんなさいですの!でも,姫うれしいですの!」
白雪がニッコリと笑う。
「よかったね,白雪ちゃん」
「はいですの!」
「鈴凛,お前がいうなお前が・・・」
「へへへ〜。でもありがとね,アニキ」
「ったく・・・ということで,二人とも明日の朝は遅れるなよ。寝過ごしたら置いていくからな」
「「は〜い」」
二人の声が重なる。
「勉強道具を忘れるなよ」
「「え〜」」
「お前ら向こうに何しに行く気だ!」
「あははは,冗談,じょ〜だん。じゃあ,一度家に帰って準備するね,アニキ」
「姫も帰って準備するですの」
「ああ,二人とも車に気をつけてな」
「「は〜い」」
「じゃあ,また明日。アニキ」
「じゃあな」
「にいさま,姫も失礼するですの」
「うん,サンドイッチごちそうさま」
「明日も準備しておくですの!楽しみにしていてね,にいさま」
「あんまり無理するなよ,じゃあね」
笑って二人を送り出す。
しかし,航は知らなかった。
ドアを閉めた後,二人が
「やった〜。作戦成功!」
といってハイタッチをしていたことを。
どうも,妹達の方が一枚上手のようである。
※※※
ということで第3話です。
まだ桃太郎は出てきませんね〜。
鞠絵ちゃんの療養所にもたどりついていませんし・・・(苦笑)
日がかわってしまいましたが,5月5日は私にとっての音楽神,岡崎律子さんの命日でした。
世間一般では「こどもの日」なわけですが・・・
「for RITZ」は,何度聞いても涙がでてきます。
「RePure〜12人のエンディング」も,妹達の心情を描ききっているという点で,数あるシスプリのCDの中でも最高の出来だと思います。
改めて,岡崎さんのご冥福をお祈りいたします・・・
鈴凛が聞いてきた。
「あのなあ,ちょっとは自分で考えろ」
半分呆れた口調で航が言う。
「そこを何とか,お願い!アニキ様」
「・・・テストかな」
この回答は,二人にとって意外だったようだ。
「え,どうして?」
「どうしてですの?」
二人とも目を丸くしている。
「テストは問題の予想だけで済むけど,レポートは論理的に書かないとダメだからね」
「え〜,そうかなあ。出る問題なんてわかんないよ」
「んなことない。定期試験なんて,授業中に先生が繰り返し言ってた箇所を覚えりゃいいだけだ。簡単だろ」
「むう〜,姫には難しいですの・・・」
「他の科目だと出来てるだろ。苦手意識をなくすんだな」
「でもさあ・・・」
鈴凛が不服そうに言う。
「せっかくのゴールデンウィークが,ぜーんぶ試験勉強で消えちゃうんだよ〜。かなり悲しいよね〜」
「仕方ないだろ。自業自得だ」
「レポートだったら,最初の1日で仕上げちゃえばあとは遊べるよね〜」
「ですの〜」
「・・・さてはお前ら」
航があることに気がついた。
「俺にそのレポートを手伝わせる気だな!」
「ピンポーン!正解。でも手伝ってなんて,そんなのアニキに悪いからさ」
鈴凛がニッと笑う。
「代わりに書いてほしいな〜,なんて。アニキは古典と日本史が得意でしょ,へへ〜。うん,我ながらいいアイデア!」
「なお悪いわ!ダメだダ・メ・!」
「え〜,ダメなの〜?」
「何と言ってもダメなものはダメ。自分で書きなさい」
「・・・だってさ,白雪ちゃん。どーしよー」
「困りましたの・・・姫は,にいさまがぜーったい手伝ってくれるって信じてましたのに・・・」
白雪が困った顔をする。
「テストもレポートも,姫はゴールデンウィークを全部使っても出来る自信がないですの・・・」
「うーん,そんなことを言われてもなあ・・・」
航が頭をかく。
「鈴凛はともかくとして,白雪を手伝ってやりたいのは山々なんだけど,もうゴールデンウィークの予定は入れちゃったんだよなあ・・・」
「私はともかくってどーゆーことよ!でもアニキの予定って何だっけ?」
鈴凛が尋ねる。
「鞠絵のところまで泊まりで行ってくる。お前達が来るまでその準備をしていたんだよ」
「え〜,アニキだけ〜?そんなのず〜る〜い〜」
「にいさまぁ,姫はうらやましいですの」
「あのな。鞠絵とは前から約束してたし,お前らも知ってたろ」
航が反論した。
「そりゃそうだけどさぁ。カワイイ妹達が休み中にもかかわらず,え〜んえ〜んって涙を流しながら勉強するっていうのに,一人だけ遊びに行くなんて〜」
「だからそれは自業自得だろうが・・・まぁ,がんばりなさい。遠く療養所の空から応援してるから」
「え〜,手伝ってくれないのぉ〜」
「勉強というのは一人ですることに意義があるんだよ」
その時,テーブルの上に置いてあった航の携帯電話が鳴った。
着メロはドビュッシーの亜麻色の髪の乙女。療養所の鞠絵からだ。
航は慌てて携帯を手にとる。
「兄上様,鞠絵です。おはようございます」
「おはよう。どうしたの,こんなに朝早く。もしかして体調が悪くなった?」
「いいえ,私は大丈夫ですよ,兄上様。お心遣いありがとうございます。明日,兄上様がいらっしゃるのを楽しみにお待ちしております」
「そっか,よかった・・・僕も楽しみだよ。もうすぐ会えるから待っててね」
「はい,兄上様。ミカエルも首を長くしてお待ちしていますよ。ところで兄上様・・・」
鞠絵が尋ねる。
「その・・・そちらに鈴凛ちゃんと白雪ちゃんがいらっしゃいますか?」
「何で分かったの?いるけど・・・」
「明日からですが,よろしかったらお二人もご一緒にと思いまして」
「え,いいの?」
「はい。にぎやかな方が私も楽しいです」
「まあ,鞠絵がそういうなら・・・じゃあ二人にそう言っておくよ。また明日電話するね」
「はい,兄上様。また明日」
「・・・」
電話を切った後,航は少し考え込んでいた。
「アニキ,さっきの電話,鞠絵ちゃんから?」
「ああ」
「なんて?」
「明日から二人も一緒にどうぞ,って」
「え,ホント!やった〜,これでレポートができるね!」
「ホントですの?姫,うれしいですの!」
「・・・時に鈴凛」
「ン,何?アニキ」
「ちょっとこっちへ来い」
「な,何かな・・・?」
鈴凛が少し怯えた様子で近づく。
「お前,鞠絵に今回のことを話したろ」
「な,何のことでしょうか・・・?私にはさっぱり・・・」
航は鈴凛のこめかみを両方の拳でグリグリする。
「お・ま・え・なあ〜,タイミングがよすぎるんだよ。さてはあらかじめ鞠絵にOKをもらってたな〜」
「痛い痛いっ,ゴメッ,ゴメンてばー!」
「こういうことは準備がいいのに,何で試験ができないかなあ〜」
航のグリグリ攻撃は続く。
「人間向き不向きがあるんだってばさ〜,ごめんなさ〜い!」
ようやく鈴凛が解放された。
「いたたたた・・・」
「まったくもう・・・少しは反省しろ」
「アニキ・・・ごめん・・・」
鈴凛が少ししょげた顔で謝る。
「分かればよろしい。・・・まあ,鞠絵もそういってるから,明日はみんなで行こうか」
鈴凛の顔が,ぱぁっと明るくなる。
「え,ホントにいいの?」
「いいよ。朝一番の電車で行くから,荷物を持って駅に集合だな。白雪もいいかい?」
「・・・はいですの」
「ん,どうかした?」
航が尋ねる。
「姫,鈴凛ちゃんがちょっとうらやましいですの・・・」
「へ?」
「姫もにいさまにグリグリされたいですの!」
「えーと・・・」
航は指で頬をポリポリとかいていたが,おもむろに右手の中指で白雪の額を軽くはじいた。
「!」
白雪が額を手で押さえる。
「白雪は共犯ということでデコピンだな。これでいい?」
「はい,ごめんなさいですの!でも,姫うれしいですの!」
白雪がニッコリと笑う。
「よかったね,白雪ちゃん」
「はいですの!」
「鈴凛,お前がいうなお前が・・・」
「へへへ〜。でもありがとね,アニキ」
「ったく・・・ということで,二人とも明日の朝は遅れるなよ。寝過ごしたら置いていくからな」
「「は〜い」」
二人の声が重なる。
「勉強道具を忘れるなよ」
「「え〜」」
「お前ら向こうに何しに行く気だ!」
「あははは,冗談,じょ〜だん。じゃあ,一度家に帰って準備するね,アニキ」
「姫も帰って準備するですの」
「ああ,二人とも車に気をつけてな」
「「は〜い」」
「じゃあ,また明日。アニキ」
「じゃあな」
「にいさま,姫も失礼するですの」
「うん,サンドイッチごちそうさま」
「明日も準備しておくですの!楽しみにしていてね,にいさま」
「あんまり無理するなよ,じゃあね」
笑って二人を送り出す。
しかし,航は知らなかった。
ドアを閉めた後,二人が
「やった〜。作戦成功!」
といってハイタッチをしていたことを。
どうも,妹達の方が一枚上手のようである。
※※※
ということで第3話です。
まだ桃太郎は出てきませんね〜。
鞠絵ちゃんの療養所にもたどりついていませんし・・・(苦笑)
日がかわってしまいましたが,5月5日は私にとっての音楽神,岡崎律子さんの命日でした。
世間一般では「こどもの日」なわけですが・・・
「for RITZ」は,何度聞いても涙がでてきます。
「RePure〜12人のエンディング」も,妹達の心情を描ききっているという点で,数あるシスプリのCDの中でも最高の出来だと思います。
改めて,岡崎さんのご冥福をお祈りいたします・・・
「さて,と。早めに準備しておくか。間際になってバタバタするのはイヤだしな」
そう言って,航はクローゼットからボストンバックを取り出した。
「5月のゴールデンウィークは4連休・・・ということは,3泊4日で鞠絵のところに行けるかな」
ゴソゴソと荷造りを始める。
「本はどれを持っていくかなあ・・・鞠絵に話を聞いてもらいながら考えをまとめたいしなあ・・・」
ぶつぶつ言いながら,航は本棚に収まりきらず床にまで山積みとなった本の中から,何冊かを選んでは元に戻すことを繰り返す。
ピンポーン
呼び鈴が鳴った。
「ん,誰だ?こんな朝早く」
首を傾げながらドアを開ける。
「はぁ〜い,アニキ。お・は・よ」
そこに立っていたのは,妹中随一の発明娘,鈴凛だった。
トレードマークのゴーグルとチャイナドレス風のつなぎ服を身にまとっている。
手にはなぜか通学用のカバンを抱えていた。
「おはよう,鈴凛。どうしたんだ,こんなに朝早く」
「ん〜,ちょっとね〜。アニキィ,上がっていい?」
「ダメといっても上がるだろ」
航が苦笑する。
「まあね〜。さすがアニキ,私のことをわかってる〜。じゃあ,おじゃましま〜す」
鈴凛は勝手知ったる様子で部屋に上がると,壁際に置いてあるソファーの上に足を組んで座り込む。
「コーヒー飲むか?インスタントだけど」
「うん!ありがと」
航はケトルに水を入れて,コンロの火をつける。
次に食器棚から,自分と鈴凛用のマグカップをとりだした。
航の一人暮らし用としては,食器棚が不相応なほど大きい。
というのも,12人の妹達がそれぞれ自分用の食器類を置いている上に,白雪が「みんなでのお食事用ですの」といって大皿やら何やらをいくつも買い込んだため,家族用の食器棚を買うハメになってしまったからだ。
「・・・で,用って何だ?」
マグカップにインスタントコーヒーの粉を入れながら,航が尋ねた。
「いやさあ・・・実はさあ・・・あのさあ・・・,アニキ〜」
鈴凛はモジモジしたまま,上目づかいに航を見る。
「ダメ!」
航がいきなりダメ出しをした。
「ちょ・・・,なにそれ〜,私まだ何も言ってないよ〜」
鈴凛があわてる。
「いつもの資金援助だろ?今は金がない」
「ち,ちがうちがう。そりゃあお金はほしいけどさあ・・・」
「ふーん,じゃあ何だ?」
「え〜とね,ん〜とね・・・」
「?」
ピンポーン
また呼び鈴が鳴った。
「宅配便か?」
「あ,ひょっとして・・」
鈴凛が小さくつぶやいたが,航には聞こえていないようだった。
「はーい,今出ます」
航がドアを開けると,頭に大きなリボンをつけた少女が立っていた。
「にいさま,おはようございますで〜すの!」
名料理人の妹・・・というより,航の食事の管理を一手に引き受けている白雪だった。
「え?ああ,お,おはよう白雪」
予想外だったので,航が少しとまどう。
白雪が,手に持っていた大きなバスケットを,ずいっと差し出した。
「これは姫からの差し入れですのよ。姫特製のサンドイッチ,朝ご飯に召し上がれ!」
「ああ,いつもありがとう。でも・・・今日はこんな朝早くにどうしたんだ?そんなに荷物を持って・・・」
不思議そうに航が尋ねた。
白雪はバスケットと,これまたなぜか通学用のカバンを抱えている。
すまなさそうに白雪が言った。
「えーと,にいさまぁ・・・,実は姫,ちょっとお願いがあるんですの・・・」
「お前もか・・・」
「『も』?」
白雪が怪訝そうな顔をする。
「鈴凛がさっき来たんだよ」
「え,鈴凛ちゃんもですの?」
「・・・まあ,とにかく上がったら。みんなで朝食にしよう」
「はいですの。にいさま,おじゃましますですの」
白雪がうれしそうに靴をぬいだ。
「ヤッホー,白雪ちゃん。おはよー」
ソファーの上から鈴凛が声をかける。
「鈴凛ちゃん,おはようですの!」
鈴凛が手招きをして白雪を呼び寄せると,声をひそめて尋ねる。
「白雪ちゃん・・・例の件だけどさ」
「そうですの・・・鈴凛ちゃん,どうするですの?」
同じく白雪も声をひそめる。
「うん。やっぱりこれはアニキにお願いするのがいちばん早いと思ってさあ・・・」
「実は姫も同じことを思いましたの・・・」
「後はどうやったらアニキがOKしてくれるかだよね・・・」
「ですの・・・」
「二人で何の相談だ?ほい,コーヒー」
航がキッチンから戻ってきた。
「3人で朝食というのも久しぶりかな。じゃあ食べようか」
「いただきまーす」
手をあわせてから,それぞれサンドイッチに手を伸ばす。
「うん,うまい」
「ホント。いつ食べても白雪ちゃんの料理はおいしいねえ〜」
「ちゃ〜んと栄養のバランスも考えているですのよ。夜更かしの多いにいさまと鈴凛ちゃんのお肌のために,ビタミンCたっぷりのフルーツをはさみこみましたの」
「わ〜い,さすが白雪ちゃん。ありがと」
「どういたしましてですの」
「ん・・・ちょっとまて白雪」
航が食べかけのサンドイッチを皿に戻す。
「なんですの?」
「今,『にいさまと鈴凛ちゃん』っていったよな」
「はいですの・・・あ”」
白雪がしまった,という顔をする。
「今日鈴凛が来ることを知ってたな」
ジロリと白雪の方を見る。
「それはそのですの・・・,あのですの・・・」
返答に困って白雪がうつむく。
「いや・・・アニキ,実はさあ・・・,え〜と・・・」
鈴凛が助け船を出そうとするが,言葉に詰まって同じくうつむく。
「そういや鈴凛の話が途中だったな・・・用件って何だ?」
「・・・」
「・・・」
鈴凛と白雪は,二人揃ってうつむいたまま口をモゴモゴさせている。
「なんだ二人とも・・・あ!」
航に,一つ思い当たることがあった。
「鈴凛,白雪」
「ななな何かな,アニキ」
「ななな何ですの,にいさま」
まだ何も言っていないのに,二人してうろたえる。
「新学期早々にやった,実力テストの結果を見せてみろ」
「「え」」
二人の声がハモる。
「こ,この前見せなかったっけ?」
鈴凛がすっとぼけたふりをするが,目が泳いでいる。
「見てない」
「み,見せるほどのものではないですの」
白雪が謙遜する。
「それはこっちで判断する。いいから見せろ」
航が強い口調でいうと,二人はしぶしぶとカバンから取り出した。
「はいこれ・・・」
「どうぞですの・・・」
「まったく,最初から出せばいいものをだなあ・・・」
そういいながら航は二人のテスト結果を見る。
「!」
航が凍りついた。
「お前らなあ・・・」
鈴凛は英語・物理・数学が,白雪は生物・化学・家庭科が高得点だったが,日本史と古典が仲良く壊滅している。
点数欄の数字は,見事なまでの赤文字だった。
「よりにもよって俺の得意科目が赤点かよ・・・,また親父に怒られるだろうが・・・」
航が軽くにらむと,二人とも首をすくめた。
「ただでさえ『妹達に甘すぎる』ってイヤミを言われているのにだなあ・・・」
「ゴメンナサイ!」
「ごめんなさいですの」
二人とも手をあわせて謝る。
「・・・やれやれ」
航が頭をかいた。
「二人とも準備をしなかったのか?テスト自体は前からあるって知ってただろ?」
「前の日は徹夜だったんだよね〜。で,当日の試験時間中爆睡,っと」
鈴凛が明るく答える。
「自慢げに言うな自慢げに・・・ったく。前日の夜は何をしていたんだ?」
「実はメカ鈴凛の調整をですね・・・」
「そんなことを試験前日にするなよな」
「だってさあ,アニキィ。こういうのにはタイミングというものがあってですね・・・」
言い訳しようとする鈴凛を,航がさえぎる。
「試験前日っていうのも,勉強するにはいいタイミングだが?」
「うぅ,それを言われると・・・」
鈴凛がへこむ。
「で,白雪は?」
「お料理のレシピを読んでたんですの・・・」
カバンを抱えたまま,上目づかいに白雪が答える。
「試験前日に?」
「はいですの・・・」
「なんでまた」
「にいさまに新しい料理を食べてもらいたいなぁと思って,気分転換のつもりでちょっとレシピの本を読んでいたら,つい・・・」
「試験勉強の方がおろそかになった,ということかな」
「そうですの・・・」
「それは逃避行動というんだよ,お前までもう・・・」
「ごめんなさいですの・・・」
再び謝って,抱えたカバンの中に顔を埋める。
「俺に謝ってもしょうがないけど・・・うーん,白雪にはいつも世話になってるしなあ・・・」
航は再び頭をかく。
「で,二人ともゴールデンウィーク明けに再試験か?」
「うん。再試験かレポートかどっちかを選ばないといけないのよね」
「ですの」
「どういうことだ?」
「えーとね,日本史の先生と古典の先生が『両方の科目に共通するテーマで面白いレポートを書いたら再試験はなしにしてやる』って」
「つまりこの1週間で,再試験のための勉強をするか,2科目の先生をうならせるレポートを書くかを選ばなきゃいけない,と」
「そういうことですの」
「・・・ふーん,なるほど。話は分かった」
航が腕を組む。
「で,二人とも試験とレポートのどっちにするんだ?」
※※※
第2話が終わったというのに,まだ鞠絵ちゃんが登場していません。
さらにタイトルの桃太郎なんて,ぜーんぜん影形もありません!
自分で書き始めておいてアレですが,何話になるんだろう・・・
<コメントレスです>
桜木さん
>異説桃太郎は数あるようですが、とりわけ面白そうな話ですね。書籍か何かで出版されたりしているのでしょうか?
ちゃんとネタ本があります(笑)
吉備津彦神社の社務所で,「−桃太郎と鬼−吉備津彦と温羅」という本を売ってます。
一般の書店では置いていないようですが・・・
この本の中に,
「温羅は逃げるために雉に姿を変えましたが,吉備津彦も鷹に姿を変え,追いかけます。
今度は川ぶちへ鯉となって温羅は逃げかくれますが,吉備津彦は鵜となって鯉を追いかけてつかまえます。
鵜が鯉をつかまえた場所は,鯉喰神社として祭られています。」
とあるんです。
実際は,この神社のあったあたりで温羅達が大和朝廷の軍に捕まった・・・といったところでしょうか。
これも考察すべきことなんですが,このペースでいくといつになることやら・・・
そう言って,航はクローゼットからボストンバックを取り出した。
「5月のゴールデンウィークは4連休・・・ということは,3泊4日で鞠絵のところに行けるかな」
ゴソゴソと荷造りを始める。
「本はどれを持っていくかなあ・・・鞠絵に話を聞いてもらいながら考えをまとめたいしなあ・・・」
ぶつぶつ言いながら,航は本棚に収まりきらず床にまで山積みとなった本の中から,何冊かを選んでは元に戻すことを繰り返す。
ピンポーン
呼び鈴が鳴った。
「ん,誰だ?こんな朝早く」
首を傾げながらドアを開ける。
「はぁ〜い,アニキ。お・は・よ」
そこに立っていたのは,妹中随一の発明娘,鈴凛だった。
トレードマークのゴーグルとチャイナドレス風のつなぎ服を身にまとっている。
手にはなぜか通学用のカバンを抱えていた。
「おはよう,鈴凛。どうしたんだ,こんなに朝早く」
「ん〜,ちょっとね〜。アニキィ,上がっていい?」
「ダメといっても上がるだろ」
航が苦笑する。
「まあね〜。さすがアニキ,私のことをわかってる〜。じゃあ,おじゃましま〜す」
鈴凛は勝手知ったる様子で部屋に上がると,壁際に置いてあるソファーの上に足を組んで座り込む。
「コーヒー飲むか?インスタントだけど」
「うん!ありがと」
航はケトルに水を入れて,コンロの火をつける。
次に食器棚から,自分と鈴凛用のマグカップをとりだした。
航の一人暮らし用としては,食器棚が不相応なほど大きい。
というのも,12人の妹達がそれぞれ自分用の食器類を置いている上に,白雪が「みんなでのお食事用ですの」といって大皿やら何やらをいくつも買い込んだため,家族用の食器棚を買うハメになってしまったからだ。
「・・・で,用って何だ?」
マグカップにインスタントコーヒーの粉を入れながら,航が尋ねた。
「いやさあ・・・実はさあ・・・あのさあ・・・,アニキ〜」
鈴凛はモジモジしたまま,上目づかいに航を見る。
「ダメ!」
航がいきなりダメ出しをした。
「ちょ・・・,なにそれ〜,私まだ何も言ってないよ〜」
鈴凛があわてる。
「いつもの資金援助だろ?今は金がない」
「ち,ちがうちがう。そりゃあお金はほしいけどさあ・・・」
「ふーん,じゃあ何だ?」
「え〜とね,ん〜とね・・・」
「?」
ピンポーン
また呼び鈴が鳴った。
「宅配便か?」
「あ,ひょっとして・・」
鈴凛が小さくつぶやいたが,航には聞こえていないようだった。
「はーい,今出ます」
航がドアを開けると,頭に大きなリボンをつけた少女が立っていた。
「にいさま,おはようございますで〜すの!」
名料理人の妹・・・というより,航の食事の管理を一手に引き受けている白雪だった。
「え?ああ,お,おはよう白雪」
予想外だったので,航が少しとまどう。
白雪が,手に持っていた大きなバスケットを,ずいっと差し出した。
「これは姫からの差し入れですのよ。姫特製のサンドイッチ,朝ご飯に召し上がれ!」
「ああ,いつもありがとう。でも・・・今日はこんな朝早くにどうしたんだ?そんなに荷物を持って・・・」
不思議そうに航が尋ねた。
白雪はバスケットと,これまたなぜか通学用のカバンを抱えている。
すまなさそうに白雪が言った。
「えーと,にいさまぁ・・・,実は姫,ちょっとお願いがあるんですの・・・」
「お前もか・・・」
「『も』?」
白雪が怪訝そうな顔をする。
「鈴凛がさっき来たんだよ」
「え,鈴凛ちゃんもですの?」
「・・・まあ,とにかく上がったら。みんなで朝食にしよう」
「はいですの。にいさま,おじゃましますですの」
白雪がうれしそうに靴をぬいだ。
「ヤッホー,白雪ちゃん。おはよー」
ソファーの上から鈴凛が声をかける。
「鈴凛ちゃん,おはようですの!」
鈴凛が手招きをして白雪を呼び寄せると,声をひそめて尋ねる。
「白雪ちゃん・・・例の件だけどさ」
「そうですの・・・鈴凛ちゃん,どうするですの?」
同じく白雪も声をひそめる。
「うん。やっぱりこれはアニキにお願いするのがいちばん早いと思ってさあ・・・」
「実は姫も同じことを思いましたの・・・」
「後はどうやったらアニキがOKしてくれるかだよね・・・」
「ですの・・・」
「二人で何の相談だ?ほい,コーヒー」
航がキッチンから戻ってきた。
「3人で朝食というのも久しぶりかな。じゃあ食べようか」
「いただきまーす」
手をあわせてから,それぞれサンドイッチに手を伸ばす。
「うん,うまい」
「ホント。いつ食べても白雪ちゃんの料理はおいしいねえ〜」
「ちゃ〜んと栄養のバランスも考えているですのよ。夜更かしの多いにいさまと鈴凛ちゃんのお肌のために,ビタミンCたっぷりのフルーツをはさみこみましたの」
「わ〜い,さすが白雪ちゃん。ありがと」
「どういたしましてですの」
「ん・・・ちょっとまて白雪」
航が食べかけのサンドイッチを皿に戻す。
「なんですの?」
「今,『にいさまと鈴凛ちゃん』っていったよな」
「はいですの・・・あ”」
白雪がしまった,という顔をする。
「今日鈴凛が来ることを知ってたな」
ジロリと白雪の方を見る。
「それはそのですの・・・,あのですの・・・」
返答に困って白雪がうつむく。
「いや・・・アニキ,実はさあ・・・,え〜と・・・」
鈴凛が助け船を出そうとするが,言葉に詰まって同じくうつむく。
「そういや鈴凛の話が途中だったな・・・用件って何だ?」
「・・・」
「・・・」
鈴凛と白雪は,二人揃ってうつむいたまま口をモゴモゴさせている。
「なんだ二人とも・・・あ!」
航に,一つ思い当たることがあった。
「鈴凛,白雪」
「ななな何かな,アニキ」
「ななな何ですの,にいさま」
まだ何も言っていないのに,二人してうろたえる。
「新学期早々にやった,実力テストの結果を見せてみろ」
「「え」」
二人の声がハモる。
「こ,この前見せなかったっけ?」
鈴凛がすっとぼけたふりをするが,目が泳いでいる。
「見てない」
「み,見せるほどのものではないですの」
白雪が謙遜する。
「それはこっちで判断する。いいから見せろ」
航が強い口調でいうと,二人はしぶしぶとカバンから取り出した。
「はいこれ・・・」
「どうぞですの・・・」
「まったく,最初から出せばいいものをだなあ・・・」
そういいながら航は二人のテスト結果を見る。
「!」
航が凍りついた。
「お前らなあ・・・」
鈴凛は英語・物理・数学が,白雪は生物・化学・家庭科が高得点だったが,日本史と古典が仲良く壊滅している。
点数欄の数字は,見事なまでの赤文字だった。
「よりにもよって俺の得意科目が赤点かよ・・・,また親父に怒られるだろうが・・・」
航が軽くにらむと,二人とも首をすくめた。
「ただでさえ『妹達に甘すぎる』ってイヤミを言われているのにだなあ・・・」
「ゴメンナサイ!」
「ごめんなさいですの」
二人とも手をあわせて謝る。
「・・・やれやれ」
航が頭をかいた。
「二人とも準備をしなかったのか?テスト自体は前からあるって知ってただろ?」
「前の日は徹夜だったんだよね〜。で,当日の試験時間中爆睡,っと」
鈴凛が明るく答える。
「自慢げに言うな自慢げに・・・ったく。前日の夜は何をしていたんだ?」
「実はメカ鈴凛の調整をですね・・・」
「そんなことを試験前日にするなよな」
「だってさあ,アニキィ。こういうのにはタイミングというものがあってですね・・・」
言い訳しようとする鈴凛を,航がさえぎる。
「試験前日っていうのも,勉強するにはいいタイミングだが?」
「うぅ,それを言われると・・・」
鈴凛がへこむ。
「で,白雪は?」
「お料理のレシピを読んでたんですの・・・」
カバンを抱えたまま,上目づかいに白雪が答える。
「試験前日に?」
「はいですの・・・」
「なんでまた」
「にいさまに新しい料理を食べてもらいたいなぁと思って,気分転換のつもりでちょっとレシピの本を読んでいたら,つい・・・」
「試験勉強の方がおろそかになった,ということかな」
「そうですの・・・」
「それは逃避行動というんだよ,お前までもう・・・」
「ごめんなさいですの・・・」
再び謝って,抱えたカバンの中に顔を埋める。
「俺に謝ってもしょうがないけど・・・うーん,白雪にはいつも世話になってるしなあ・・・」
航は再び頭をかく。
「で,二人ともゴールデンウィーク明けに再試験か?」
「うん。再試験かレポートかどっちかを選ばないといけないのよね」
「ですの」
「どういうことだ?」
「えーとね,日本史の先生と古典の先生が『両方の科目に共通するテーマで面白いレポートを書いたら再試験はなしにしてやる』って」
「つまりこの1週間で,再試験のための勉強をするか,2科目の先生をうならせるレポートを書くかを選ばなきゃいけない,と」
「そういうことですの」
「・・・ふーん,なるほど。話は分かった」
航が腕を組む。
「で,二人とも試験とレポートのどっちにするんだ?」
※※※
第2話が終わったというのに,まだ鞠絵ちゃんが登場していません。
さらにタイトルの桃太郎なんて,ぜーんぜん影形もありません!
自分で書き始めておいてアレですが,何話になるんだろう・・・
<コメントレスです>
桜木さん
>異説桃太郎は数あるようですが、とりわけ面白そうな話ですね。書籍か何かで出版されたりしているのでしょうか?
ちゃんとネタ本があります(笑)
吉備津彦神社の社務所で,「−桃太郎と鬼−吉備津彦と温羅」という本を売ってます。
一般の書店では置いていないようですが・・・
この本の中に,
「温羅は逃げるために雉に姿を変えましたが,吉備津彦も鷹に姿を変え,追いかけます。
今度は川ぶちへ鯉となって温羅は逃げかくれますが,吉備津彦は鵜となって鯉を追いかけてつかまえます。
鵜が鯉をつかまえた場所は,鯉喰神社として祭られています。」
とあるんです。
実際は,この神社のあったあたりで温羅達が大和朝廷の軍に捕まった・・・といったところでしょうか。
これも考察すべきことなんですが,このペースでいくといつになることやら・・・












