はるきげにあ的煩悩生活
鞠絵ちゃん、誕生日おめでとう!
実験的鞠絵小説(その3)
「あの~鞠絵さん」
ついつい敬語になってしまう。
「なんですか?」
鞠絵の目が据わっているように見えるのは,きっと僕の気のせいではないだろう。
「それではブランデー入り紅茶ではなく,紅茶入りブランデーとなってしまいますが・・・」
最初の1杯を恐る恐るといった様子で口をつけると,後のペースは驚くほど早かった。
お代わりの度にブランデーの量が増えていったけど(鞠絵が自分で注いだ),頬がほんのりと赤くなるくらいであまり変化がない。
鞠絵が酒に強いとは知らなかった。
「何か問題でもありますか?」
「未成年の飲酒は・・・」
「最初に飲ませたのは兄上様ですよ」
「そりゃそうだけどね。それだけ飲むと明日に残るよ」
「これくらいの量ならまだ大丈夫です」
「なんで分かるの?」
「前にも飲んだことがありますから」
さりげなかったので,聞き流すところだった。
「え?」
鞠絵は悪戯っぽく笑った。
「お料理教室でお菓子を作ることがあるんです。その時にちょっと味見を・・・」
「お菓子じゃなくてお酒の味見をしたわけね」
「はい」
「じゃあ,なんでさっきは止めたの?」
「未成年ですから。いけないことはいけないです」
「変なところで固いなあ。でもそのカップを持ってたら説得力ないよ」
「ふふ,そうですね」
そういって,鞠絵はカップを一気に飲み干した。
目を丸くする僕に微笑みながら,鞠絵は言葉を続ける。
「私,今とてもうれしいんです」
「え?」
「大人になったら,兄上様と一緒にお酒を飲みたいと思ってたんです。テレビのドラマにでてくるようなバーで。二人ともおしゃれして,グラスを傾けるんです。でも,その夢がもう叶っちゃいました」
「そういう店は彼氏と行くもんじゃないかな?兄貴じゃなくて」
軽く返したつもりだったけど,鞠絵の反応は僕の予想外だった。
「いいえ,兄上様とじゃないとダメなんです!」
乱暴にカップを置くと,僕の胸に飛び込んできた。そのままベッドに二人とも倒れ込む。
「兄上様でないと・・・」
「・・・」
鞠絵の細い肩が震えている。どうやら泣いているようだ。
こういう時にかける言葉って,どんな参考書にも載ってないよなあ・・・
かなりマヌケなことを考えながら,しばらくの間僕は鞠絵の頭を撫で続けていた。
                                                        (続く)
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