はるきげにあ的煩悩生活
鞠絵ちゃん、誕生日おめでとう!
「桃太郎 VS Twelve Sisters!」(その2)
「さて,と。早めに準備しておくか。間際になってバタバタするのはイヤだしな」

そう言って,航はクローゼットからボストンバックを取り出した。

「5月のゴールデンウィークは4連休・・・ということは,3泊4日で鞠絵のところに行けるかな」

ゴソゴソと荷造りを始める。

「本はどれを持っていくかなあ・・・鞠絵に話を聞いてもらいながら考えをまとめたいしなあ・・・」

ぶつぶつ言いながら,航は本棚に収まりきらず床にまで山積みとなった本の中から,何冊かを選んでは元に戻すことを繰り返す。

ピンポーン

呼び鈴が鳴った。

「ん,誰だ?こんな朝早く」

首を傾げながらドアを開ける。

「はぁ~い,アニキ。お・は・よ」

そこに立っていたのは,妹中随一の発明娘,鈴凛だった。

トレードマークのゴーグルとチャイナドレス風のつなぎ服を身にまとっている。

手にはなぜか通学用のカバンを抱えていた。

「おはよう,鈴凛。どうしたんだ,こんなに朝早く」

「ん~,ちょっとね~。アニキィ,上がっていい?」

「ダメといっても上がるだろ」

航が苦笑する。

「まあね~。さすがアニキ,私のことをわかってる~。じゃあ,おじゃましま~す」

鈴凛は勝手知ったる様子で部屋に上がると,壁際に置いてあるソファーの上に足を組んで座り込む。

「コーヒー飲むか?インスタントだけど」

「うん!ありがと」

航はケトルに水を入れて,コンロの火をつける。

次に食器棚から,自分と鈴凛用のマグカップをとりだした。

航の一人暮らし用としては,食器棚が不相応なほど大きい。

というのも,12人の妹達がそれぞれ自分用の食器類を置いている上に,白雪が「みんなでのお食事用ですの」といって大皿やら何やらをいくつも買い込んだため,家族用の食器棚を買うハメになってしまったからだ。

「・・・で,用って何だ?」

マグカップにインスタントコーヒーの粉を入れながら,航が尋ねた。

「いやさあ・・・実はさあ・・・あのさあ・・・,アニキ~」

鈴凛はモジモジしたまま,上目づかいに航を見る。

「ダメ!」

航がいきなりダメ出しをした。

「ちょ・・・,なにそれ~,私まだ何も言ってないよ~」

鈴凛があわてる。

「いつもの資金援助だろ?今は金がない」

「ち,ちがうちがう。そりゃあお金はほしいけどさあ・・・」

「ふーん,じゃあ何だ?」

「え~とね,ん~とね・・・」

「?」

ピンポーン

また呼び鈴が鳴った。

「宅配便か?」

「あ,ひょっとして・・」

鈴凛が小さくつぶやいたが,航には聞こえていないようだった。

「はーい,今出ます」

航がドアを開けると,頭に大きなリボンをつけた少女が立っていた。

「にいさま,おはようございますで~すの!」

名料理人の妹・・・というより,航の食事の管理を一手に引き受けている白雪だった。

「え?ああ,お,おはよう白雪」

予想外だったので,航が少しとまどう。

白雪が,手に持っていた大きなバスケットを,ずいっと差し出した。

「これは姫からの差し入れですのよ。姫特製のサンドイッチ,朝ご飯に召し上がれ!」

「ああ,いつもありがとう。でも・・・今日はこんな朝早くにどうしたんだ?そんなに荷物を持って・・・」

不思議そうに航が尋ねた。

白雪はバスケットと,これまたなぜか通学用のカバンを抱えている。

すまなさそうに白雪が言った。

「えーと,にいさまぁ・・・,実は姫,ちょっとお願いがあるんですの・・・」

「お前もか・・・」

「『も』?」

白雪が怪訝そうな顔をする。

「鈴凛がさっき来たんだよ」

「え,鈴凛ちゃんもですの?」

「・・・まあ,とにかく上がったら。みんなで朝食にしよう」

「はいですの。にいさま,おじゃましますですの」

白雪がうれしそうに靴をぬいだ。

「ヤッホー,白雪ちゃん。おはよー」

ソファーの上から鈴凛が声をかける。

「鈴凛ちゃん,おはようですの!」

鈴凛が手招きをして白雪を呼び寄せると,声をひそめて尋ねる。

「白雪ちゃん・・・例の件だけどさ」

「そうですの・・・鈴凛ちゃん,どうするですの?」

同じく白雪も声をひそめる。

「うん。やっぱりこれはアニキにお願いするのがいちばん早いと思ってさあ・・・」

「実は姫も同じことを思いましたの・・・」

「後はどうやったらアニキがOKしてくれるかだよね・・・」

「ですの・・・」

「二人で何の相談だ?ほい,コーヒー」

航がキッチンから戻ってきた。

「3人で朝食というのも久しぶりかな。じゃあ食べようか」

「いただきまーす」

手をあわせてから,それぞれサンドイッチに手を伸ばす。

「うん,うまい」

「ホント。いつ食べても白雪ちゃんの料理はおいしいねえ~」

「ちゃ~んと栄養のバランスも考えているですのよ。夜更かしの多いにいさまと鈴凛ちゃんのお肌のために,ビタミンCたっぷりのフルーツをはさみこみましたの」

「わ~い,さすが白雪ちゃん。ありがと」

「どういたしましてですの」

「ん・・・ちょっとまて白雪」

航が食べかけのサンドイッチを皿に戻す。

「なんですの?」

「今,『にいさまと鈴凛ちゃん』っていったよな」

「はいですの・・・あ”」

白雪がしまった,という顔をする。

「今日鈴凛が来ることを知ってたな」

ジロリと白雪の方を見る。

「それはそのですの・・・,あのですの・・・」

返答に困って白雪がうつむく。

「いや・・・アニキ,実はさあ・・・,え~と・・・」

鈴凛が助け船を出そうとするが,言葉に詰まって同じくうつむく。

「そういや鈴凛の話が途中だったな・・・用件って何だ?」

「・・・」

「・・・」

鈴凛と白雪は,二人揃ってうつむいたまま口をモゴモゴさせている。

「なんだ二人とも・・・あ!」

航に,一つ思い当たることがあった。

「鈴凛,白雪」

「ななな何かな,アニキ」

「ななな何ですの,にいさま」

まだ何も言っていないのに,二人してうろたえる。

「新学期早々にやった,実力テストの結果を見せてみろ」

「「え」」

二人の声がハモる。

「こ,この前見せなかったっけ?」

鈴凛がすっとぼけたふりをするが,目が泳いでいる。

「見てない」

「み,見せるほどのものではないですの」

白雪が謙遜する。

「それはこっちで判断する。いいから見せろ」

航が強い口調でいうと,二人はしぶしぶとカバンから取り出した。

「はいこれ・・・」

「どうぞですの・・・」

「まったく,最初から出せばいいものをだなあ・・・」

そういいながら航は二人のテスト結果を見る。

「!」

航が凍りついた。

「お前らなあ・・・」

鈴凛は英語・物理・数学が,白雪は生物・化学・家庭科が高得点だったが,日本史と古典が仲良く壊滅している。

点数欄の数字は,見事なまでの赤文字だった。

「よりにもよって俺の得意科目が赤点かよ・・・,また親父に怒られるだろうが・・・」

航が軽くにらむと,二人とも首をすくめた。

「ただでさえ『妹達に甘すぎる』ってイヤミを言われているのにだなあ・・・」

「ゴメンナサイ!」

「ごめんなさいですの」

二人とも手をあわせて謝る。

「・・・やれやれ」

航が頭をかいた。

「二人とも準備をしなかったのか?テスト自体は前からあるって知ってただろ?」

「前の日は徹夜だったんだよね~。で,当日の試験時間中爆睡,っと」

鈴凛が明るく答える。

「自慢げに言うな自慢げに・・・ったく。前日の夜は何をしていたんだ?」

「実はメカ鈴凛の調整をですね・・・」

「そんなことを試験前日にするなよな」

「だってさあ,アニキィ。こういうのにはタイミングというものがあってですね・・・」

言い訳しようとする鈴凛を,航がさえぎる。

「試験前日っていうのも,勉強するにはいいタイミングだが?」

「うぅ,それを言われると・・・」

鈴凛がへこむ。

「で,白雪は?」

「お料理のレシピを読んでたんですの・・・」

カバンを抱えたまま,上目づかいに白雪が答える。

「試験前日に?」

「はいですの・・・」

「なんでまた」

「にいさまに新しい料理を食べてもらいたいなぁと思って,気分転換のつもりでちょっとレシピの本を読んでいたら,つい・・・」

「試験勉強の方がおろそかになった,ということかな」

「そうですの・・・」

「それは逃避行動というんだよ,お前までもう・・・」

「ごめんなさいですの・・・」

再び謝って,抱えたカバンの中に顔を埋める。

「俺に謝ってもしょうがないけど・・・うーん,白雪にはいつも世話になってるしなあ・・・」

航は再び頭をかく。

「で,二人ともゴールデンウィーク明けに再試験か?」

「うん。再試験かレポートかどっちかを選ばないといけないのよね」

「ですの」

「どういうことだ?」

「えーとね,日本史の先生と古典の先生が『両方の科目に共通するテーマで面白いレポートを書いたら再試験はなしにしてやる』って」

「つまりこの1週間で,再試験のための勉強をするか,2科目の先生をうならせるレポートを書くかを選ばなきゃいけない,と」

「そういうことですの」

「・・・ふーん,なるほど。話は分かった」

航が腕を組む。

「で,二人とも試験とレポートのどっちにするんだ?」


※※※

第2話が終わったというのに,まだ鞠絵ちゃんが登場していません。

さらにタイトルの桃太郎なんて,ぜーんぜん影形もありません!

自分で書き始めておいてアレですが,何話になるんだろう・・・


<コメントレスです>

桜木さん

>異説桃太郎は数あるようですが、とりわけ面白そうな話ですね。書籍か何かで出版されたりしているのでしょうか?

ちゃんとネタ本があります(笑)
吉備津彦神社の社務所で,「-桃太郎と鬼-吉備津彦と温羅」という本を売ってます。
一般の書店では置いていないようですが・・・

この本の中に,

「温羅は逃げるために雉に姿を変えましたが,吉備津彦も鷹に姿を変え,追いかけます。
今度は川ぶちへ鯉となって温羅は逃げかくれますが,吉備津彦は鵜となって鯉を追いかけてつかまえます。
鵜が鯉をつかまえた場所は,鯉喰神社として祭られています。」

とあるんです。
実際は,この神社のあったあたりで温羅達が大和朝廷の軍に捕まった・・・といったところでしょうか。
これも考察すべきことなんですが,このペースでいくといつになることやら・・・
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コメント
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桃太郎 VS Twelve Sisters!
こんにちは、ゆたんぽです
今度のお話はスケールが大きそうで楽しみです。

ご参考までに12妹の一人称をあげておきますね♪

可憐 可憐
花穂 花穂
衛   ボク
咲耶 私
雛子 ヒナ
鞠絵 わたくし(ここ重要・笑)
白雪 姫
鈴凛 私
千影 私
春歌 ワタクシ(ココ重要・笑)
四葉 四葉
亞里亞 亞里亞

ではこれにて失礼 ノシ

p・s コメントは公開可、アドレスは非公開でお願いしますm(_ _)m
2008/05/06(火) 01:30:08 | URL | byゆたんぽ (#H1hVtvJI) [ 編集]

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