はるきげにあ的煩悩生活
鞠絵ちゃん、誕生日おめでとう!
「桃太郎 VS Twelve Sisters!」(その6)
鞠絵が案内してくれたあずまやは,療養所の中庭にある池のほとりに立っていた。

水面をさわやかな風が通り過ぎていく。

航達は,あずまやの中に腰を落ち着けた。

「よくここで,ミカエルと一緒に本を読むんです」

ミカエルの頭をなでながら鞠絵が言った。

「へぇーっ,いいところだねー」

「風が気持ちいいですの」

二人が感心する。

「全くだ。よく昼寝が・・・いや読書が進みそうだ」

「もう,兄上様ったら」

鞠絵が苦笑した。

「ごめん,つい本音がでた」

「じゃあさ,みんなでお昼寝を・・・」

「さて始めるぞ」

鈴凛の提案は,あっさりと却下された。

「ちぇっ・・・」

「何かいったか?」

「いえなんにも」

「今日中にまとめないと,明日から遊べないぞ」

「わかってま~す」

「がんばるですの」

「じゃあまず最初に,登場人物の確認だな」

航が鞠絵の方を見る。

「鞠絵,まとめた成果を見せてもらおうかな」

「はい。では始めますね」

鞠絵が,持参したノートをぱらりとめくった。


<第一部:桃太郎の鬼退治 検証編>

「桃太郎に登場するのは,

1.桃太郎

2.おじいさん

3.おばあさん

4.犬

5.猿

6.雉

7.鬼

です。このうち,鬼は複数いるようですが,正確な人数は分かりませんね」

「意外と少ないんだね」

「もともとお伽話というのは,口頭で伝えられるものだからな」

航が説明する。

「あんまり出てくる人が多いと,訳が分からなってしまうだろ。ましてや聞くのは子どもが多いだろうし」

「納得ですの」

白雪がうんうんとうなずく。

「じゃあ今度はそれぞれについてもう少し詳しく見ていこうか。鞠絵,続けてくれる?」


(その1 桃太郎ってなんなのさ)

「はい,では最初に桃太郎から。そもそも,桃太郎とは何者か?ということですね」

「え,桃太郎って桃太郎でしょ。電車の中でもアニキにいったけどさ,他に何かあるの?」

鈴凛が不思議そうにいった。

「ま,フツーはそう答えるだろうな。じゃあ,桃太郎の登場シーンをもう一度」

「川の上流から,どんぶらこ~どんぶらこ~と流れてきた桃から生まれたんでしょ」

「常識的に考えてあり得ないだろ。赤ちゃんが入るだけの桃って,どれくらい大きいんだ?ついでにいうと,本当に入っていたらあっという間に窒息死だ」

航が愉快そうに指摘する。

「いや・・・そりゃそうだけどさ」

鈴凛が困った顔をして考え込む。

「だから,何かのたとえ話なんじゃないのかな?うーん・・・」

代わりに白雪が尋ねる。

「じゃあにいさまは,どう考えてるんですの?」

「そうだな・・・」

航は少し考えてからいった。

「桃というのは,昔から霊力があって魔を退ける聖なる果物とされていたんだ。日本書紀にもあるようにね。だから,桃から生まれたからその力で鬼退治ができた・・・という理由付けのためと考えられるんだけど・・・」

「ど・・・で,アニキその続きは?」

「桃太郎で桃が出てくるのがここまでなんだよな。後はまるで出てこない」

「え~と,姫も思い出しますの・・・う~んと,確かにそうですの」

「そういやそうだね。なんか『桃太郎』って名前を付けるためだけに桃が登場したみたいだね~」

「・・・」

「ん?アニキ,どうかした?」

航が瞬きもせず鈴凛をじっと見ている。

「ちょ,ちょっとアニキ,そんなに見つめられたら恥ずかしいよ・・・」

鈴凛が顔を赤くしてうつむく。

航が小さくため息をついた。

「お前の直感『だけ』はたいしたものなんだがなあ・・・」

「なんかものすごーく失礼なことをいわれている気がするけど,どういうこと?」

「桃太郎の始まり方には,もう一つあるんだよ。鞠絵,どう?」

「はい,もう一つあります。江戸時代では,こちらの方も有名だったようですね」

「どんなのですの?」

「川の上流から桃が流れてくるのは同じなんですが,その中に桃太郎はいなくて,桃は桃のままなんです」

「ほうほう,それで?」

「おばあさんが桃を家に持ち帰って,おじいさんと一緒にそれを食べると,翌日に二人とも若返ってしまったんです。それで・・・その・・・」

鞠絵が顔を赤らめる。

「その後,ちょっと呼び方がおかしいけど,若返ったおじいさんとおばあさんとの間に子どもができて,桃太郎と名付けられた,というわけだな」

航がフォローする。

「鞠絵,ごめん。恥ずかしいことをいわせちゃったね」

「いえ・・・本にもそう書いてありましたので・・・」

「わ~,アニキセクハラ~」

「セクハラですの~」

二人がはやし立てる。

「わざとじゃないって。途中で気づいたんだよ」

「ホント~?」

「あのな・・・でもこっちの方がまだ納得できるストーリーだろ。中国だと桃は不老不死になれる果物だしな」

「うん。桃から生まれたっていうよりは,分かりやすいかも」

「でも,そんなお話は初めて聞いたですの」

「ああ,それはな・・・はい鞠絵チェンジ」

「今私達が知っている桃太郎は,巖谷小波という人が明治時代にまとめたものなんです。それまでは,全国各地にいろいろな桃太郎があったようですね」

「へ~,そうなんだ~。じゃあ,さっきのおじいさんとおばあさんが若返るって話は,その人が採用しなかったわけだね」

「そりゃそうだろ」

「なんで?」

「桃太郎は国語の教科書にも載ってたんだぞ。小学校低学年のちっちゃい子達に,桃でおじいさんとおばあさんが若返って子どもができました・・・ていう話はできないだろ?今ならともかく,昔みたいにそういう表現に厳しかった頃ならなおさらだな。生々しすぎるよ」

「たしかにそうですの・・・姫も,雛子ちゃんや亞里亞ちゃんに『赤ちゃんてどこから来るの?』ってきかれて困ったことがありますの・・・」

「あ~,え~と・・・」

自分でネタを振っておきながら,何と言っていいか困っている航を見かねて,鞠絵が助け船を出す。

「兄上様,桃についてですが・・・」

「あ,そうそう。桃太郎で不思議なのは,さっきもいったけど桃から生まれたという設定が後半全然出てこないことなんだ。鬼を退治するのに,桃の霊力を使ってもいいんじゃないかな?それでこそ『さすが桃から生まれた桃太郎!』のはずだけど」

「そうだよねえ・・・鬼にトドメをさすのが”必殺,ピーチスラッシュ!”とかさ」

「”ピーチボンバー!”はどうですの?」

「なんで英語なんだよ・・・それはともかくして,ここで一つ疑問がでてくる」

「どんな?」

「桃から生まれた桃太郎と,鬼ヶ島に鬼退治に行った桃太郎は別人じゃないかって」

「!」

鈴凛と白雪が目を丸くする。

「さっき鈴凛がいってたけど,桃の役割っていうのは,『桃太郎』の名前の由来をつけるためだけだとしたら,説明がつくんだよ」

「え,じゃあ鬼ヶ島に行った桃太郎はどうなるの?」

目を丸くしたままの鈴凛が尋ねる。

「そこでもう一度考えてみよう。鬼ヶ島に行くのは桃太郎じゃなきゃいけないかな?」

航がいった。

「うーん。鬼退治だよねえ・・・勇者だったら誰でもいいかも」

「でもにいさま,桃太郎が鬼ヶ島に行くのは必然ではないですの?」

「必然じゃないんだよ」

「え?」

「話の筋を思い出してごらん。ある日突然桃太郎が『鬼退治に行く!』って言い出すだろ」

「そうですの・・・でもそれは,鬼が悪いことをいっぱいしていたから・・・じゃないですの?」

「さあ,そうはどうかな・・・ま,鬼については後でもう一回考えるから。鞠絵,続きをいいかな?」

「はい。桃太郎の前半と後半は別の話ではないか,という説は以前からありますね」

「え,そうなの?」

「そうなんです。鬼ヶ島での鬼退治については,源為朝の伊豆大島での活躍などが原型じゃないかという説があります。また,前半なんですけど,桃太郎というお伽話が誕生した頃は,『子どもがほしかったおじいさんとおばあさんが,桃の力で桃太郎を授かりました。もしくは,桃から生まれた桃太郎を授かりました。めでたしめでたし』で完結していた可能性がある,という説もありますね」

「なるほどなるほど。それだとストーリーがシンプルだね」

「桃の種はお薬にもなりますのよ。そのまま食べてよし。ピーチパイにしてもよし。桃ってスゴイですの!」

「・・・ということでだ。桃太郎には,『桃から生まれただけの桃太郎』と『鬼ヶ島に行った自称桃太郎』の二人がいた可能性がある,ということかな」

話がそれそうになったので,航が無理矢理まとめた。

「でもさ,いつどこでそんな話がくっついたのかな?」

「不思議ですの・・・」

「兄上様,いかがですか?」

鞠絵が面白そうな表情を浮かべて航に尋ねた。どう答えるか興味があるらしい。

「自分なりの推測はしているんだけどね,まだいうのは早いかな。もうちょっと検討してからにするよ」

航がそう返すと,鞠絵は少し残念そうにいった。

「そうですか・・・じゃあ,後のお楽しみですね」

「そんなこといって,実は分かってないんじゃないの~?」

鈴凛がニヤニヤしている。

「アニキ,鞠絵ちゃんの前でカッコつけようなんて思ってない?」

「思ってない!こういう時だけ元気よくツッコむな!」

「にいさま,ムキになっちゃダメですの」

「お前らなあ・・・」

鞠絵はクスクスと笑っている。

「・・・最初の桃太郎だけでやけに時間がかかったな。次にいこうか」

航は,兄の威厳をこめて言ったつもりだった。

しかし三人の妹達は,気にもしていないようだ。

笑いながら返事をする。

「ほ~い」

「はいですの」

「はい,兄上様」



(つづく)

※※※

またも一日空いてしまいました。

ネタが尽きた・・・というわけではないんです。むしろ逆。

いざ書き始めるとキャラが暴走して,なかなか本論に入ってくれないんですよ。

「もっとしゃべらせろー」とガンガン自己主張してくるんです(特に鈴凛(笑))

第6回で,やっと「桃太郎」にたどり着きましたからね~。

この先はどうなることやら。

ちなみに,今日ももちろん仕事中ですよ。

文章を練ってる合間に仕事をやってます(笑)

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コメント
▼この記事へのコメント<(あれば表示)
兄上様と鞠絵が「博士と助手」みたいで良い感じにハマってますね。

鈴凛がいつもよりアホっぽいですが『鞠絵至上主義の兄上様』のページなので構わないと思います。
むしろ鞠絵とのシーンをもっとやれと(ry
2008/05/11(日) 22:43:30 | URL | byゆたんぽ (#H1hVtvJI) [ 編集]

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