はるきげにあ的煩悩生活
鞠絵ちゃん、誕生日おめでとう!
桃太郎 VS Twelve Sisters!」(その10)
(その2 鏡よ鏡よ鏡さん,本当の歴史ってなあに?)

「じゃあ,今度は歴史から見た『桃太郎』だな」

航はそう言って,手にしたノートをパラリとめくる。

「桃太郎が主人公じゃないけど,鬼退治に類する話は全国各地にあるんだ。有名なところだと,大江山の酒呑童子や,羅生門の茨木童子かな」

「アニキ,『童子』って何?」

「『子ども』って意味だよ。昔は成人になったら髪を結っただろ」

「ちょんまげみたいなの?」

「・・・それは武士だけだ」

「そうなんですの?」

「武士は頭に兜を被るから,髪を剃っていないと,汗で頭が蒸れてのぼせるらしいんだよ。それが,ちょんまげの始まりだと聞いたことがある」

「なるほど」

「子どもの時は,貴族でも髪はおかっぱみたいに短くしていて,元服したら大人になった証として髪を結っていたんだ。鬼達は大人の年齢になってもそうしなかったから,『子ども』みたいだということで『童子』って呼ばれていたんだよ」

「兄上様,鬼達はわざと髪を結わなかったのかもしれませんね。都に住む人達への対抗として,『お前達の風習には従わない』と考えていたかも・・・」

航がうなずく。

「うん,一理あるね。酒呑童子の話の中に,都人をえらく敵視した台詞があるからな」

「へ~,どんなの?」

「うろ覚えなんだけどね,『鬼達は人を騙したりしない』って・・・」

「やっぱり鬼は悪くないですのね」

「そういうこと。昔話でも,『鬼を騙して財宝をいただく』というパターンがよくあるからなあ。人と鬼のどっちがずる賢いのか分からないよ」

「・・・そういえば,兄上様」

「ん?」

「『一寸法師』も鬼退治の物語ですね」

「よく気がついたね,鞠絵」

航に誉められて,鞠絵がニコリと笑った。

「いえ・・・」

「『一寸法師』ですの?姫も昔読んだですの・・・」

そう言って,白雪が何かを思い出そうとする。

「えーと,『一寸法師』といえば打ち出の小槌ですの。・・・そういえば,桃太郎は桃で一寸法師はお椀ですけど,どっちも川の上から流れてくるですのね」

「お,白雪もさらりと鋭いことを言うね」

航の言葉に,白雪が満面の笑みを浮かべる。

「へへ~,にいさまにほめられちゃったですの!」

「その姿勢を忘れないようにな」

「はいですの!」

「実は,桃太郎と一寸法師に共通している『川の上流から流れてくる』ということを,『異界からの神の来訪』といった考えで,これまでも分析されているんだよ」

「あ・・・そうなんですの。ちょっと残念ですの」

「いやいや。目の付け所はよかったよ。ただ,一寸法師も調べるとかなり奥が深そうなんで,次の宿題にしてもらえるかな?」

「航くんの夏休みの宿題ということですね」

鞠絵が微笑む。

「そういうこと,鞠絵先生。採点はその時ということで」

航が言葉を返す。

「鞠絵ちゃん,採点を甘くしちゃダメだよ。鞠絵ちゃんはアニキに大甘だからさ~」

「あのな・・・また話がそれたよ」

頭をかきながら航が言った。

「桃太郎が鬼ヶ島でもらった・・・というか,奪った宝物の中に『打ち出の小槌』があったという話もあるんだ」

「あれ?じゃあ,桃太郎が一寸法師なの?」

「というか,まだその頃には桃太郎とか一寸法師とかの説話が完成していなかった,ってことだと思うよ。いろんな桃太郎や一寸法師が全国各地にあって,いろんな人によって語り継がれてきた,と考える方が自然だね」

「そっか・・・本とか雑誌とかは,最近の話だもんね」

その言葉を聞いて,航が鈴凛をじっと見つめる。

「ん?どうかしたの?アニキ」

「その言葉を忘れるなよ」

「え,なんで?」

「結論に関係する重要なキーワードなんだ」

「そうなの?」

「そうなんだよ」

「???」

鞠絵・鈴凛・白雪は,揃って頭からクエスチョンマークを出している。

「『黍団子』の時にも言ったけどね」

それにかまうことなく,航は話を続けた。

「今の『桃太郎』のストーリーには,『吉備津彦による吉備征服』という歴史的な事実が大きく影響しているんだ」

「きびつひこがきびだんごできびをせいふく・・・ですの?」

「あはは,まさに『きび』づくしだね。アニキ」

「別に早口言葉じゃないんだが・・・」

「それはいつ頃の話なんですの?」

「第十代崇神天皇の御代・・・ということになっているけど,それが西暦でいうと何年頃になるかは正確には分からないんだよ」

「え,なんで?」

「『日本書紀』の記述を信じると,初代の神武天皇の即位は紀元前660年ですからね・・・。その計算ですと,第十代崇神天皇は紀元前100年頃から紀元前30年頃の天皇ということになりますが・・・」

鞠絵の説明に,航が追加する。

「その頃の日本は,まだ弥生時代だ。稲作を始めたくらいの小さなムラのレベルで,大規模な遠征なんか不可能だよ。実際には,紀元3世紀から7世紀までの古墳時代の出来事だろうな」

「というと,今から1,500年以上前か~。ずいぶん昔の話だよね~」

「そうなんだけど,そうでもない」

「にいさま,どういうことですの?」

「岡山県では現在進行形だよ」

「え,何が?」

「兄上様,それは吉備津神社と吉備津彦神社の神事のことでしょうか?」

「ご名答。岡山県にある二つの神社では,鬼退治に関係する神事が今も続いている。ということは,鬼退治は昔に終わった話じゃない,ということさ」

「じゃあさ,今もずーっと鬼は退治され続けてるってこと?千年以上も?」

「というより,『鬼が退治されたこと』を忘れさせないようにしている,ってことだろうな」

「『誰』が『誰』に対してそういうことをしているんでしょうか?」

「鞠絵には見当がついてるんじゃないのかな?」

航が聞き返すと,鞠絵は少し困ったように首をかしげた。

「おぼろげですが・・・まだはっきりとは」

「なるほど」

「アニキ,あのさあ」

「ん?」

「『きびつひこ』さんのことがまだ途中なんだけど・・・」

「あ,そうだったな。ごめんごめん。岡山県には,温羅という鬼が大和朝廷の吉備津彦に敗北した,という話が伝わっているんだ。『吉備津彦』の本名は五十狭芹彦(いさせりひこ)といって,吉備を征服したから『吉備津彦』って呼ばれるようになったんだ。で,この人が吉備津神社と吉備津彦神社の両方に祀られている」

「兄上様,『征服』ですか?本だと『平定』になってますが?」

「大和朝廷にしてみたら吉備を『平定』したことになるんだけど,吉備の人達にしてみたら『征服』か『制圧』じゃないかな?歴史は勝者が書くから注意しないとね」

「・・・そうですね」

「ふ~ん,鬼の名前って温羅っていうんだ」

「もちろん逆だよ」

航が皮肉っぽくいった。

「逆って?」

「大和朝廷に従わない産鉄民を『鬼』と呼んだように,温羅が大和朝廷に服従しなかったから,『鬼』にしたんだよ。温羅の場合,製鉄民でもあったから二重の意味を含むかな。もちろん同じ人間だ」

「にいさま,大和朝廷はどうして吉備を攻めたんですの?」

「それはね,第一に,吉備では製鉄業が盛んだったこと。『鉄は国家なり』というのは今も昔も真実だよ。第二に,吉備は瀬戸内海の要衝だったこと。ここを抑えないと,九州・大和・ひいては朝鮮半島や中国大陸との交易ルートが分断されるからね。まあ,あとは吉備の農業生産力が高かったからとかいろいろあるけど,この二つが一番大きな理由だね」

「吉備と大和朝廷がさ,仲良くすることはできなかったのかなあ?」

「無理だな。というか,大和朝廷は最初からそのつもりはない」

「どうしてですの?」

「分け前が減るから」

「え,何の?」

「吉備を外交交渉とかで大和朝廷の支配下に入れたら,吉備にある製鉄業の10のうち8とか9,もし交渉に失敗して吉備側に有利な条件で支配下にはいるとしたら,6とかしか大和朝廷のものにならない可能性があるだろ。吉備を武力で完全に征服したら,製鉄業がそっくりそのまま手にはいるからな」

「そ,それって勝手すぎるんじゃ・・・」

「もちろん。あくまでも大和朝廷側の理屈だよ。でもその理屈で吉備を攻めたんだ」

「吉備の人がかわいそうですの・・・」

「攻められた吉備の側も,ただ嘆き悲しんでいたわけじゃない。温羅を中心に抵抗したんだけど,最終的には敗北して,温羅は首をはねられた」

「え・・・千年以上前のことなのに,何でそんな具体的なことまで分かってるの?」

「温羅の首が埋められているのが,吉備津神社なんですよ」

「そうなんだ・・・」

「そういうこと。じゃあ,次は吉備津彦と温羅の戦いをもう少し詳しく見てみようか」


(つづく)

※※※



ろ,6月に入って初の更新とは・・・何という筆の遅さ!・・・orz

なんと,衝撃的なニュースが!

きりしまさん最終回のお知らせ

ガ━━━━(;゚д゚)━━━━━ン !!

昨年シスプリにハマってから,最初に読み漁ったサイトの一つがきりしまさんでした。


本当に,長い間お疲れさまでした。

また,面白い作品をたくさんありがとうございました。

コミケではサインをねだってご迷惑をおかけしました。

サンクリではポスターありがとうございました。

でも,でも,残念です・・・


 
        。・ ゜。                   。゜。
       。・    ゜。               。゜   ・。
     。・        ゜。            。゜      ・。
   。・            ゜。        。゜         ・。
 。・                ゜。     。゜             ・。
 ・。                                     。・
∴                  ・(ノД`)・                 ∴


老舗のシスプリサイトがまた一つ・・・
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